コマ遊び本来の弾き合う醍醐味を追求したベイブレードバースト。
1日1000回の「シュート」を繰り返した開発努力が、実力・戦略・運の絶妙なバランスへと結実した。

● ベイブレードを知らない女性社員のひとことが決め手

 いったんはボツになった企画だった。ベイブレードは1999年から発売され、全国の男の子が夢中になった現代版のベーゴマで、2008年には第2世代の「メタルファイト ベイブレード」が展開。この流れを踏まえて、2013年秋に第3世代の企画が練られていた。メンバーがたくさんの案を持ち寄ってアイディア会議がおこなわれ、あがった案のなかに「壊れるベイブレード」はあった。しかし、すぐに却下となった。その当時を堀川はこう振り返る。「私たちの玩具開発で絶対にかかせないのは『面白さ』ともう一つ、『安全』です。回転するベイブレードが壊れると勢いよくパーツが飛び散る。危険性を考えると商品化は難しいと感じました。
 しかし、そのとき最終候補に残った案の企画を進めるも結局、行きづまってしまった。面白さが足りない。これでは今までのベイを越えられない。もう一度最初から考えようとなった。むしろまったくベイブレードを知らない人間の意見を聞いてみようと、ちょうど配属されたばかりの社員にもともとあった30のプランをすべて見せてみた。彼女が「これ面白い!バトルした相手が壊れたら超気持ちイイじゃん!」と迷わず選んだのが、壊れるベイブレードだった。「純粋に『面白い!!』といっている様子を見て、ここにはなにかあるな、“壊れるベイ”に挑戦してみようと思いました。」と、堀川。
 さっそく安全面の検討がはじまった。試行錯誤の繰り返しだったが、そのうちに「破壊して勝つ」という遊びの面白さに自分たち自身が虜になる。「この遊びが完成すれば、今までにないすごいベイブレードが出来る」という自信を得ていくことにもなった。結局、ベイブレードの闘技場となるスタジアムに特別なカバーを採用することなどで、パーツ飛散の問題は解決を見た。次はベイブレード本体をどうするか、だ。

● ただのおもちゃではない。
 まるでスポーツをやっているような感覚、ドラマが生まれる楽しさ

「ちょうど良い壊れ方」を探るべく、メンバーは試作品をつくりつづけた。村木はこう語る。「すぐに壊れては面白くない。コマ遊び本来の互いを弾き合う醍醐味を活かしつつ、ここぞというタイミングで壊れるものを追求しました。自分たちで遊んで確かめるしかないので、試作のベイを1日1000回はシュート(ベイを回すこと)しては微調整を続けました。毎日腕がパンパンになりましたね(笑)地道で大変な作業だったけれど、ベイの形状がコンマ数ミリ変わるだけで、バーストさせる確率が大幅に変化する。一切妥協はしませんでした。ここをこだわり抜くことで、最高に面白いものができると思っていたからです。」
 山本も頷きながら語る。「ベイブレードバーストが面白いところは、そんな何億回にもわたる試作調査によって生み出した『実力と運の絶妙なバトルバランス』です。シュートの上達によって強くなれるのですが、それで必ず勝てるわけではない。更にバースト機能が付いた今回のベイの勝負は最後の一瞬までわからない。いまにも回転が止まりそうなベイでも、ぶつかりどころによっては相手のベイを壊せるかもしれない。勝負に絶対は存在しない、そして最後まで何があるか分からない。1戦1戦にドラマがある、まるでスポーツです。」
 堀川、村木、山本はいずれも自らがベイブレーダーとしてベイで勝負する楽しみに親しんできた「男の子」たちだ。それに対して、間瀬は今まで、ベイブレードになじみがない上、入社2か月にしてベイブレードバーストの担当になり当初戸惑っていた。しかし、大会で子どもたちが遊んでいるのを見たり、シュートをしてみるうちに、自分自身がすっかりハマってしまった。「圧倒的に強いベイはなく、このタイプのベイはこのタイプのベイには強いが、こちらのタイプとは負けやすいというように相性があって、それを戦略として組みこめる。遊びの深さに感動しました。今は先輩たちにサポートしてもらいながら、新アイテムを続々と開発しています!」

● 世界の子どもへ、あらゆる世代へ

 ベイブレードバーストのもう一つの特徴は「ベイクラウドシステム」の存在だ。ベイを回すランチャーに記録端末ベイロガーを取りつけると、シュート力や回転数などが記録できる。そのデータがスマートフォンの無料アプリで管理できる仕組みだ。クラウド上に記録されたデータや蓄積されたポイントを目にすれば、自分たちの頑張りや練習の成果を実感でき、遊び続けるモチベーションの維持につながる。子どもたちに長く遊んでほしいという願いから考えたアイデアだ。
 こうした楽しみ方の広がりが子どもたちの心を掴み、毎週末全国各地でベイブレードの大会が開かれているほどの活況を呈している。大会会場では、1戦1戦のドラマに涙する子ども、歓喜する子ども。開発途中、上手くいかない時は、そんな子どもたちの姿を想像して乗り越えてきた。それが現実となり、目の前で繰り広げられる。自分たちのやっている仕事をの素晴らしさを感じずにはいられない。
「今や親子2代にわたるベイブレーダーも珍しくないですね。お父さんと子どもが一緒に遊ぶ姿もよく目にします。お父さんの方が必死だったりもします(笑)」と村木。
「今後も大会やアニメなどでもっと盛りあげていきますよ。とにかくより多くの子どもたちにこの楽しさを体験してほしいです。」と山本。
 堀川は「すでにアジアでベイブレードは広まっています。アメリカでもスタートしました。ベイブレードは、子どもにとってすべてを懸けた真剣勝負。負けたらすごく悔しいし、次は勝てるように努力する。そんな体験を世界中の子どもに与えたいです。」と言う。
「自分の開発したベイでたくさんの人が遊んでくれている姿を見ると本当に嬉しい。だから子どもたちからのアイデアを取り入れてファン参加型の新開発も面白いと思います!これからもっとベイブレードを育てていくのが楽しみです。」と言うのは間瀬だ。
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