デジタル玩具が台頭する今「リカちゃんのお人形遊び」に対して時代遅れなのでは?という意見もあった。しかし、毎年生まれてくる子どもにとって「古い」という概念はない。メンバーはその原理原則から出発し、女の子の憧れに訴えるヒット商品を生みだしていった。

● 女の子の心を動かす「美・職・住・姫」の再構築

「リカちゃん」は誕生から50年、女の子たちに愛されつづけてきたロングセラー商品だ。しかし、ビジネスとしてみれば実は2012年以降厳しい状況を迎えていた。外部競合として、モノ消費からコト消費のトレンドもあり、2014年には世の中の流行を捉えアイドルをテーマとした商品を投入するも、芳しい結果は得られなかった。
 そんな2014年10月、リカちゃん企画部へ異動してきた栗原。「苦しいときは横道に行きたくなるが、逃げたら負けだ。誰のために商品をつくるのか。もう一度メインターゲットの女の子をしっかり見て、やるべきことを愚直にやろう!」とメンバーを鼓舞した。「毎年産まれてくる子どもたちにとって、「古い」という概念は無いんです。ロングセラーの定番商品を「古い」「昔からある」と認識するのは、大人の都合ですから。」
議論は徹底的に。そしてブレない。子どもたちが本当に喜んでくれるヒット商品の創出に向けてメンバー一丸となって進行していきました。
 開発リーダーの木下は、栗原の言葉に大いに共感した。「今まで50年間リカちゃんをずっと支持してくれた女の子たちがいる。これって本当にすごいことだと思うんです。ここでリカちゃんの文化を止める訳にはいかない。私たちは自信をもって商品をつくりましょう」
 若手のマーケッター藤山も動きだす。「リカちゃんの軸は大きく『美・職・住・姫』の4つ。いつの時代の女の子も大好きなこのフレームを再構築しよう。女の子の夢や憧れをいつでも自由に叶えてくれるリカちゃんを再度作り上げていきましょう。」

● リカちゃんで遊ぶ女の子たちの笑顔に励まされる

 道は決して平坦ではなかった。栗原たちは、新商品のプロトタイプをつくってはモニターの女の子たちに実際に遊んでもらい、その反応を見ることを繰り返した。そこでヒットする予感が得られても、商品化までにはさらにいくつものハードルを超えなければならない。
 たとえば、「キラかみリカちゃん」は小さなラインストーンをリカちゃんの髪の毛に施せるヘアアレンジが楽しい商品だが、いよいよ発売を間際に控えた中国工場での量産段階で品質トラブルが発生した。「スティックでラインストーンをつまみ上げるのですが、先端のゴムにストーンがくっつかないんです。ぐっと強い力を入れれば着かないこともないのですが、子どもが遊ぶものですからそれではいけません。いろいろ調整しても、どうしてもうまくいかない。これはもう発売中止しかないと音を上げそうになりました」と栗原は述懐する。
 そのとき背中を押してくれたのは、女の子たちだった。「工場のむかいにある幼稚園の園児たちを呼んで、モニターとしてこのキラかみリカちゃんで遊んでもらいました。彼女たちの様子を見ていると、本当に楽しそうで。この商品は絶対に女の子たちに気に入ってもらえると確信し、即座に品質改善を施しました。挫けている場合じゃないとファイトが湧いてきたんです」。
 こうして完成した「キラかみリカちゃん」は2015年のヒット商品となった。
 その時期にタカラトミーに入社してきた西山はこう語る。「ヒット商品を出したからといって立ち止まるのではなく、さらにチャレンジングなことをする部署だというのが最初に驚いたことです。そして、先輩たちはマーケティングも企画もスピード感がとにかく凄くて。この激動の時期に、そしてこの先輩たちと一緒にリカちゃん商品に携われていることは、とても幸せです。」

● 「リカちゃん」文化をさらなるステージへ

藤山は次のように語る。「子どもたちの求めていることや流行をタイミングよく商品に投影するのはやはり簡単ではありません。時代より遅すぎてもダメだし、早すぎでもダメ。でも、それが見事にあった時は本当に快感です!2016年7月に発売したショッピングモールもその一つ。商品をかざすとピッと音を出して会計するセルフレジが大好評です」
「お買いもの」はリカちゃん遊びのなかでも定番の一つ。そして、ショッピングモールは現代の子どもが行く場所の上位を占めるスポットだ。そこに目を付けた。
「このショッピングモールはさまざまなアイテムが揃っていて、トングでパンを掴む遊びもできます。セルフレジもそうですが、子どもたちが現実ではやりたいけどまだ小さくてやらせてもらえないことを、ここで“疑似体験”できる。それこそがまさにリカちゃん遊びの楽しさなんです。」と木下。
 女の子がメインターゲットであることはこれからも変わらず、ブレずに商品を展開していく。その一方で、大人の女性が楽しめる新ブランド「LiccA」など、支持層を広げる試みもはじまっている。
「多種多様な生き方、育て方が重視される昨今、ランドセル1つとっても、昔と違い色々な色が肯定されています。リカちゃんを通して、女の子は夢をもち、憧れを抱き、自分の色つまり個性を見つけていきます。リカちゃんは、そんな女の子たちの成長に多大なる良い影響をもたらしていると思っています。一方で、影響を「与えてしまう」という責任感もあります。今もこれからも女の子たちが夢をもって生きてくれるよう、大きな使命感をもって日々仕事をしています」。
栗原は落ちついた声で、そう結んでくれた。

いつの時代も女の子に夢や憧れを与えるリカちゃん。
だからこそ進化を続けます。

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