“〜人生、山あり谷あり〜”のコピーで始まるテレビコマーシャルと共に「人生ゲーム」が日本で発売されたのは、1968年(昭和43年)のことでした。 日本のGNP(国民総生産)が西ドイツを抜いて世界第2位になり、3億円強奪事件が世間を騒がせていた頃、そして世紀の大イベント「日本万博博覧会」を2年後に控えてまさに「いざなぎ景気」に沸く、高度成長の絶頂期でした。

盤ゲームといえば、サイコロを振っていかに早くゴールを目指すかという、いわゆる”すごろく”式のゲームしか存在しなかった当時、”人生”というテーマ、自分を表すピンを刺した自動車型のコマ、ボード上の立体的な山や建物、ドル札を模したおもちゃの紙幣のやり取り、そしてなによりサイコロの代わりに回すルーレットは画期的なものとして受け入れられ、「人生ゲーム」は子供から大人まで夢中になる大ヒット商品となりました。

1960年に米国で生まれた「THE GAME OF LIFE」を原型に日本版としてつくられた「人生ゲーム」は発売以来、シリーズ商品を含め現在まで累計約1,200万個以上販売しています。ヒットの要因は、単に商品としての新しさだけではありません。ゲームの中で就職や結婚など人生に関わるさまざまな出来事を疑似体験し、そこに繰り広げられる波瀾万丈なもう一つの人生に一喜一憂することができるのです。
しかも勝負の行方がほとんどルーレットの目にかかっているので子供も大人も対等に勝負することができます。家族や友達が顔を突き合わせて、ゲームの中だけでも運をつかんで億万長者を夢見ることができる、またプレイする度に全く違った結果になる。これがファミリー層を中心に「人生ゲーム」が40年間親しまれてきた要因なのです。

あれから40年、石油ショック、バブル経済とその破綻、金融破綻など、激動する世相を反映させながら「人生ゲーム」もリニューアルを重ね、辛口の風刺を効かせた「人生ゲーム平成版」などの姉妹商品も登場しました。 21世紀を迎えて、今改めて40年前に発売された初代の「人生ゲーム」を眺めていると、当時プレイした子供達がルーレットに託した”夢”が垣間見えるようです。

ただ過去を回顧するだけでなく、人生を通して今人々が求めている”夢”とは何か、また求められている未来の”夢”とは何かを捜していきたいと考えています。「人生ゲーム」は常にその時々の”夢”を綴った私たちの人生の玉手箱なのです。
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