コラム
2026.08.27
【観戦記事】 準々決勝:sai vs. フィオ ~ロア、ロア、ロア!~
ディズニー・ロルカナ・TCGにおける日本での競技シーンは「ディズニーロルカナ グランプリ 2025 Spring 東京」から始まった。その後も数々の大型大会を経て、上位入賞を果たした選手に「ディズニーロルカナ日本一決定戦 2026」(以下、日本一決定戦 2026)への参加権利が付与されてきた。
日本一決定戦 2026。2026年のシーズンを締めくくり、日本一のイルミニアが誕生する、いわば総決算に位置づけられているイベントである。
1日目は総勢57名のイルミニアが各々工夫を凝らしたデッキを持ち込み、スイスラウンド9回戦を戦い抜いてきた。
2日目へ進出したのは上位8名のみ。しかもここからは負ければ即脱落のシングルエリミネーション方式である。
勝ち進んできたのは、sai選手と、フィオ選手(以下、敬称略)。デッキは「エメラルド/スティール」同士である。
準々決勝を戦う2人のイルミニアを紹介しよう。
イルミニア紹介

遥々長野県からやってきたsaiはスイスラウンドを圧倒的1位で駆け抜けた。その成績は実に8勝1敗。まさにノリに乗っているイルミニアといえるだろう。
使用デッキは「エメラルド/スティール」。選択理由はシンプルに《アースラ – 騙し屋》と《ディアブロ – 忠実なる使い魔》を使いたかったから。実際、デッキは期待に応えて、見事saiを決勝ラウンドへと送り込んだ。
デッキ公開制を意識した作りになっており、《大砲発射!》や《恋しちゃぁぁぁったわ!》の採用が特徴的なリストに仕上がっている。特に《大砲発射!》は後手で光る1枚。
普段は地元のショップ、カードショップすずのねでプレイしている。地元へ吉報を持ち帰れるか。

対照的に、フィオはギリギリの8位で滑り込んだ。普段はイタリアン・トマトカフェジュニア柏店でロルカナに興じている。
使用デッキは「エメラルド/スティール」であり、選択理由はカズキ選手のオススメとのこと。カズキ選手?
フィオ「師匠ですね。ロルカナもですが、カードゲーム全般の。師匠のデッキなら間違いないです」
師匠が太鼓判を押してくれたデッキを手に、準々決勝へと挑む。
ここから始まる決勝ラウンドは、すべてデッキ公開制の下、Bo3形式(2ゲーム先取)で行われる。
ガッチリと握手をかわすと、準々決勝が始まる。

ゲーム1
先手はsai。初手をみるとsaiは6枚、フィオは3枚をマリガン。
saiは《マックス・グーフ – 反抗期のティーン》をインクに埋めると挨拶代わりに《ディアブロ – マレフィセントのスパイ》をプレイし、《風よ吹け》、《ピート – リングのレフェリー》の姿を確認。

返すターン、フィオも同じく《ディアブロ – マレフィセントのスパイ》で返し、saiの手札が2枚の《アースラ – 騙し屋》、《背すじがゾクッ!》をはじめとした手札破壊で構成されていることを知る。
予定調和にsaiは《アースラ – 騙し屋》をプレイし、《昔ながらのこの営み》を捨てさせる。フィオの手札に《マックス・グーフ – 反抗期のティーン》があるため、長引けば回収されることは折り込み済だ。
慎重にクエストへ向かい、このゲームを通じてsaiが初めてのロアを獲得する。
対してフィオも同じく《アースラ – 騙し屋》で返し、《背すじがゾクッ!》を奪う。
ここまで鏡打ちだったゲームに初めて変化が生まれる。3ターン目、saiは《アースラ – 七つの海の騙し屋》をプレイし、歌を引いた際のリターンを最大化しつつ、フィオにプレッシャーをかけたのだ。

フィオ「手札は残り2枚ですよね?」
当然、フィオも分岐点とわかっている。5枚の手札を前にさまざまなシミュレーションを重ねる。saiの盤面のキャラクター、《アースラ – 七つの海の騙し屋》とどう向き合うか。
結果、《ピート – リングのレフェリー》をプレイしてアクションカードにストップをかけ、1ターンの安全を確保する。同時に、ミラーマッチでサイズ感のあるキャラクターの用意に成功する。
saiは《レニー – おもちゃの双眼鏡》で《風よ吹け》を落とし、フィオは《ミューズ – アートとヒーローの専門家》をプレイ。両者とも歌を歌う準備は整った。
先に歌を引いたのは、saiだった。《レニー – おもちゃの双眼鏡》でクエストし、《ミューズ – アートとヒーローの専門家》をプレイ。すぐさま《アースラ – 七つの海の騙し屋》で《風よ吹け》を歌う!

2点×2回のダメージ、2体のバウンスにより、フィオの盤面は《ミューズ – アートとヒーローの専門家》のみに。キャラクター数は5対1と圧倒的に開きが生まれ、クエストし5ロアまで伸びる。
一転して窮地に立たされたフィオ。《マックス・グーフ – 反抗期のティーン》で《風よ吹け》を回収、《ミューズ – アートとヒーローの専門家》で《風よ吹け》を歌い、《ディアブロ – マレフィセントのスパイ》を除去し、《アースラ – 七つの海の騙し屋》をバウンスし、キャラクター数を3対2へと戻す。

saiは《ディアブロ – マレフィセントのスパイ》で手札をチェックすると、《アースラ – 騙し屋》と《ミューズ – アートとヒーローの専門家》でフィオの《ミューズ – アートとヒーローの専門家》へとチャレンジ。
続けて、《マックス・グーフ – 反抗期のティーン》を《風よ吹け》で除去しつつ、《ミューズ – アートとヒーローの専門家》の効果で自分の《アースラ – 騙し屋》をバウンス。すぐさま出し直し《背すじがゾクッ!》を捨てさせ、《ディアブロ – 石使いの召使い》をプレイ。再びキャラクター数を5対1とする。
しかし、saiの手札が0枚になったこの隙をフィオは見逃さなかった。《ディアブロ – 忠実なる使い魔》が登場する。

《ディアブロ – 従順なワタリガラス》という明確なタイムリミットを突きつけられたsai。《レニー – おもちゃの双眼鏡》以外でクエストへ向かい5ロア獲得し、合計10ロア。《アースラ – 七つの海の騙し屋》を追加する。
フィオの《ディアブロ – 忠実なる使い魔》が動き出す。《マックス・グーフ – 反抗期のティーン》で追加コストを支払って《風よ吹け》を回収、《ディアブロ – 従順なワタリガラス》で歌い、《レニー – おもちゃの双眼鏡》を除去する。
《ミューズ – アートとヒーローの専門家》は自身の《マックス・グーフ – 反抗期のティーン》を戻すと、続けて《昔ながらのこの営み》をプレイし、《アースラ – 七つの海の騙し屋》をバウンスしつつ、saiのアクションを止める。

ターンを渡すと、saiがドローし、《ディアブロ – 忠実なる使い魔》の“遠くまで飛んでお行き”が誘発する。
このまま長引けば形勢は不利のため、saiは全力でクエストし5ロア獲得。獲得ロア数を15とする。
フィオは《マックス・グーフ – 反抗期のティーン》で《風よ吹け》を回収。除去+バウンスでsaiのロアレースの低速化を目論む。
しかし、ここしかないタイミングでsaiは必殺の1枚をトップデッキ。《昔ながらのこの営み》でフィオのアクションに待ったをかけ、《ミューズ – アートとヒーローの専門家》で盤面のキャラクターを返す。

除去を封じられてしまっては、次のターンのクエストを防ぎようがない。レディ状態のキャラクターの合計ロア値が5とわかると、フィオは敗北を受け入れる。
sai「(リソースを伸ばせるカードを)ほとんど何も引かなかったですね」
saiはリソースカードをほとんど引けず、攻めきるしかなかった。果敢なクエストが功を奏し、ギリギリで間に合った。
sai「お互い《ミューズ – アートとヒーローの専門家》が残ってクエストが止まる流れだったので、《ピート – リングのレフェリー》や《昔ながらのこの営み》経由で動きを封じる必要がありました。15ロアまでいけば、キャラクターを並べて1ターンだけアクションを封じて、その次のターンに無理矢理20ロアまでいけるなと思いました」
無事逃げ切れました、とsaiは安堵した。
sai 1-0 フィオ
ゲーム2
先手はフィオ。迷いながらも展開力で勝る先手を選ぶとフィオは3枚、saiは5枚を戻す。
フィオは《ディアブロ – マレフィセントのスパイ》でゲームの開始とすると、saiの手札には《大砲発射!》と《持つんだ熱い心》の2枚の除去が。《アースラ – 騙し屋》、《背すじがゾクッ!》と手札破壊も充実している。

saiは《大砲発射!》で《ディアブロ – マレフィセントのスパイ》に応じる。
フィオは《ディアブロ – 石使いの召使い》、saiは《アースラ – 騙し屋》から《持つんだ熱い心》を捨てさせる。
だが、ここで確認したフィオの手札に2枚の《ディアブロ – 忠実なる使い魔》の姿が。
返すターン、フィオは3枚目のインクをセットすると《ディアブロ – 忠実なる使い魔》をプレイ。さらに《俺は悪党!意地悪!下品!》を捨て、《ディアブロ – 石使いの召使い》を《ディアブロ – 忠実なる使い魔》へと変身させて、一気に《ディアブロ – 忠実なる使い魔》2体を登場させるビッグプレイ!
速攻クエストへ向かい1ロア稼ぎ、saiへターンを渡すと、早くも《ディアブロ – 忠実なる使い魔》の効果が誘発。

saiはセットインクで迷い、《ピート – リングのレフェリー》をプレイ。《ディアブロ – 忠実なる使い魔》で増えた手札を有効活用させず、動きを止める狙いがある。
フィオは《ディアブロ – 忠実なる使い魔》2体でクエストするも、《ピート – リングのレフェリー》の影響が大きく動けない。キャラクターを追加できないことからも、アクション寄りの手札と予想される。
とはいえ《ディアブロ – 忠実なる使い魔》2体がもたらすアドバンテージは圧倒的であり、手札は4枚に。
しかし、《ピート – リングのレフェリー》で封じた1ターンはあまりにも大きなものだった。saiは《大砲発射!》と《持つんだ熱い心》を駆使して2体の《ディアブロ – 忠実なる使い魔》を除去することに成功する。《ディアブロ – マレフィセントのスパイ》から《背すじがゾクッ!》を続ける。

《ディアブロ – 忠実なる使い魔》を失ったフィオは次なる脅威として《アースラ – 七つの海の騙し屋》をプレイする。先ほどの《ディアブロ – マレフィセントのスパイ》で《風よ吹け》が手札にあることが判明しており、まだまだ盛り返すチャンスはある。
それでも、舞浜の風はsaiへと吹いていた。
4インク目をセットすると力強く《エリノア – 名高い外交家》をプレイし、全力でクエストへ向かい3ロア。ターン終了時に《エリノア – 名高い外交家》の効果が誘発し、《アースラ – 七つの海の騙し屋》へとダメージを与える。
フィオは《アースラ – 七つの海の騙し屋》で《風よ吹け》を歌い、《エリノア – 名高い外交家》の除去に成功する。2体の《ディアブロ – 忠実なる使い魔》、《アースラ – 七つの海の騙し屋》のおかげで手札は潤沢にあるが、盤面のキャラクター差をうめる必要がある。《背すじがゾクッ!》でsaiの最後の手札を捨てさせ、《ディアブロ – 石使いの召使い》をプレイ。

saiは《ピート – リングのレフェリー》で《風よ吹け》を歌い、先ほどダメージをあたえていた《アースラ – 七つの海の騙し屋》を除去。クエストでロアを6とする。
フィオがプレイしたのは3枚目の《ディアブロ – 忠実なる使い魔》、ゲームを手繰り寄せようとするが、saiも負けてはいない。再び《エリノア – 名高い外交家》をプレイし一気に11までロアを伸ばしつつ、《ディアブロ – 忠実なる使い魔》へダメージを飛ばす。

何よりもキャラクター差は5対2とsaiが圧倒的なリード。ロアも先行され、フィオは苦しいゲームとなる。《マックス・グーフ – 反抗期のティーン》で《持つんだ熱い心》を回収し、《ディアブロ – 忠実なる使い魔》で歌い、《ピート – リングのレフェリー》を除去する。
saiは4体のキャラクター全員でクエストし15ロアへ。《ファーガス – ダンブロッホの王》で盤面を固め、《エリノア – 名高い外交家》で《ディアブロ – 忠実なる使い魔》を落とし、16ロアとする。
《ディアブロ – 忠実なる使い魔》が届けた最後のドロー、そこに望みはあるのか。20ロアが間近に迫っている。フィオに、返す手段はあるのだろうか。
手札と盤面を見比べて、考えるフィオ。
《マックス・グーフ – 反抗期のティーン》で《持つんだ熱い心》を回収すると、それが事実上、投了の合図となった。

sai 2-0 フィオ
勝者: sai
対戦後
焦点は《大砲発射!》だろうか。《ディアブロ – 忠実なる使い魔》2体という不利な局面を打開した立役者であった。
sai「《大砲発射!》、入れたかいがありました」
狙い通りの一撃。実際、初手で残したのは《大砲発射!》と《ピート – リングのレフェリー》のみだった。
saiは愛機エメラルド/スティールを手に、準決勝へ向かう。

フィオ「(saiのデッキに)《大砲発射!》があるじゃないですか。手札の1枚少ない先手で《大砲発射!》をくらうと致命的かなと思って後手と迷いました」
フィオの予想は的中してしまい、彼の日本一はここで終了となった。
しかし。
「今度は3人で来ようね!」
フィオの対戦を見届けた友人たちから頼もしい声が聞こえた。
束の間の休息を経て、フィオと友人は再び日本一を目指す。
次のクエストは、もう、始まっている。

ライター:富澤 洋平 撮影者:福井 翔