コラム
2025.08.02
「ディズニーロルカナ グランプリ 2025 Summer 東京」優勝者 ケン選手インタビュー
約2000名のイルミニアが集ったディズニー・ロルカナ・TCGの祭典「ディズニーロルカナ グランプリ 2025 Summer 東京」(以下、ディズニーロルカナ グランプリ)。
決勝ラウンド進出者のデッキタイプを紹介したTOP64 メタゲームブレイクダウンでも解説されている通り、イルミニアたちは各々工夫を凝らしたデッキを持ち込み、予選ラウンド9回戦の後、決勝ラウンド6回戦の全15回戦という長丁場を戦い抜いたのです。

その頂点に立ったのは「アメジスト/スティール」を使用したケン選手。決勝戦ではなべ選手の「アンバー/スティール」と対戦しましたが、終始リードを保ち続けました。《A WHOLE NEW WORLD》を予想して手札のほとんど使いきり、圧倒的な場を構築してみせました。実際にプレイされた《A WHOLE NEW WORLD》はケン選手の目論見通りであり、引いた7枚のカードを最大限有効活用しました。
最終局面では《女王の城 – 鏡の間》から《マーリン – ヤギ》とプレイし、ロアレースを制してみせたのです。
栄冠を手にし、喜びの感情を爆発させるケン選手に、インタビューを実施しました。

──「優勝、おめでとうございます」
ケン「ありがとうございます。」
──「簡単に、本大会優勝までの軌跡を教えていただければと思います」
ディズニー・ロルカナ・TCGとの出会い
ケン「『ディズニーロルカナ グランプリ 2025 Spring 東京』に当選したのをきっかけに始めました。大会に参加するのも初めてで。それまでの練習はほとんど家で家族と遊んでいたくらいでした」
──「ひとつの当選が運命を変えた感じですね」

ケン「運良く予選ラウンドは抜けられて、トップ64まで進むことができました。それでやる気が出て、ちょっと真剣に遊んでみようと家以外でも練習したいなと思うようになりました」
──「普段はどんなふうにロルカナをしているのでしょうか」
ケン「主に家で遊んでいますが、大会に向けて練習場が欲しいなと思っていました。流石にこのままでは大型大会には通用しないと感じていて。そこで新しくできたロルハッピーに通いだしました。毎日違う対戦相手の方と対戦できるので、それがすごいいい経験になりました。毎日新しい刺激があり、練習になりました」
本大会に向けての流れ・調整
──「ディズニーロルカナ グランプリに向けて具体的にはどのように調整したのでしょうか」
ケン「『逆襲のアースラ』加入後は本当にロルハッピーの平日大会に出て、デッキをちょっとずつ変更するなどの調整をしました。主に特定の誰かと一緒に調整したとかはないんですよね。同じデッキを使用してくれる方がいなくて」
──「デッキ自体は0から独自に構築されたのでしょうか」

ケン「元々は『ディズニーロルカナ グランプリ 2025 Spring 東京』に参加するにあたってデッキを探していたところ、X(旧Twitter)でnoteを書いている人がおり、完コピしたのが始まりです。それでちょっと勝てたため、気に入って使い続けていました。『逆襲のアースラ』環境もこれでいこうと思い、少しずつ調整して持ち込みました」
──「イルミニアたちの腕試しの場である『セット チャンピオンシップ』には参加されたりしましたか」
ケン「『インクランド探訪』環境のときは凄くて勝てて、勝ちっぱなしでした。同じデッキで勝ち続けられて、アメジスト/スティール最強やんて思ったくらい。ですが、『逆襲のアースラ』環境になった途端負けっぱなしで。全然勝てなくて今朝も不安でいっぱいのまま参加しました」
──「そんな不安の中アメジスト/スティールを選択した要因は?」
ケン「正直、今朝の6時までアンバー/サファイアにしようかどうしようかと悩んでいました。アメジスト/スティールは『逆襲のアースラ』のカード0枚で代わり映えしないが、愛着のあるデッキ。使い慣れてないデッキを選択して後悔するよりは、使い慣れたデッキでうまくいかなかったかなと考えられるほうが自分としては納得できるかなと考えて、アメジスト/スティールに決めました。これなら負けたとしても納得できるな、と」
デッキに関して
──「使用されたデッキ名アメジスト/スティールについて解説をお願いいたします。どんなデッキタイプでしょうか」
ケン「キャラクターを主体としたミッドレンジであり、除去カードとして複数の歌カードを採用しています。サファイア系のインクブースト(《魚の骨ペン》など使用できるインク数を増やす戦略)を苦手としていますが、それ以外にはまあまあ勝てるかなと思っています。メタゲーム的な話になりますが、最大勢力のアメジスト/ルビーには強い。これは明確なストロングポイントですね」
──「アメジスト/ルビーに強い理由について解説いただけますか」
ケン「アメジスト/ルビーは構造的に1ターンにカードを2枚以上プレイすることが難しいデッキです。場へ干渉できる低コストの歌カードもありません。対してアメジスト/スティールはキャラクターを展開しながら、前のターンに出したキャラクターで《風よ吹け》や《そこに登場、ゼウス!》を歌い場に干渉していけます。これにより展開と除去が同時に行え、キャラクターの頭数に開きが生まれます」

ケン「結果的にアメジスト/ルビー側は《BE PREPARED》のような高コストのカードに頼らざるを得なくなります。こちらはその前に覆せない場を作っておけばよいのです。端的にいえば、テンポ差で勝つということですね」
──「テンポ差とはつまるところ、キャラクターの展開力と歌カードを歌うことで生み出されるキャラクター数の開き、そしてそれにより起因するロアレースでのリードでしょうか」
ケン「その通りですね」
──「なにか、調整の中で特別なカードやテクニックなどをデッキに入れたりしたのでしょうか?採用候補に上がったカードはありますか。」
ケン「《ダイヤ プラチナ ペシャンコに!》は4コストの歌カードであり、苦手としている青系に強くなりそうで採用を検討しました。試しましたが、これ1枚では改善されず諦めました」

ケン「特定のデッキに強いカードを入れることでデッキパワーが下がるのも懸念点のひとつです。《ダイヤ プラチナ ペシャンコに!》はアイテムカードを退場させるだけでほかのデッキとの対戦には影響を及ぼしません。振れ幅の大きいカードを採用するよりも、やりたいことを突き詰めたほうがデッキパワーも担保されて、全体勝率も上がると考えて採用を見送りました」
──「《ロビン・フッド – 有能な戦士》の採用理由を教えてください」
ケン「《呪われた人魚 – アースラの被害者》など意思力の低いキャラクターを多用したエメラルド系アグロに効果的です。《ペガサス – 空を翔ける馬》に対しても回避を無視して対応できます。ほかには《風よ吹け》や《そこに登場、ゼウス!》と組み合わせてダメージを底上げでいるのも隠れた魅力です。《そこに登場、ゼウス!》に+1点できれば《ロビン・フッド – シャーウッドの英雄》を対処できますから」

ケン「また、ほかのデッキと比べて《ロビン・フッド – シャーウッドの英雄》への変身元となるキャラクターを6枚と多めに確保できています。シナジー(相乗効果)の塊みたいなカード、そこが気に入っています」
──「《風よ吹け》2枚、《持つんだ熱い心》3枚は調整が感じられる枚数ですね」
ケン「インクレスのカードは採用枚数がどうしても難しくて。このデッキは毎ターンカードをプレイしていきたいので、《風よ吹け》はインクとして置けないのが気になりました。枚数を増やすと手札にかさ張って動きにくいこともあり、《持つんだ熱い心》を優先しています」
ケン「対戦中、2回は除去を打つ場面を作りたくて合計9枚採用しています。4~5では少ない。ただし、枚数はフレキシブルに変更可能です」

──「《そこに登場、ゼウス!》と《女王の城 – 鏡の間》は4枚ずつ採用され、絶対に引きたいと意思が伝わってきます」
ケン「《そこに登場、ゼウス!》は《マーリン – ウサギ》で歌える最強の歌カード。2~3枚の構築もありますが、自分は最強の除去カードの1枚であるこのカードを歌いたいと考えました。《シスー – 勇猛果敢な戦士》など意思力4以上のキャラクターを退場させるために使用します」

ケン「先ほど話した通り、青系がきつく、《ダイヤ プラチナ ペシャンコに!》では相性は改善されません。デッキパワーを下げずに青系に対抗できるカードを探したところ、《女王の城 – 鏡の間》へたどり着きました。キャラクター展開の遅いデッキに対しては定着しやすく、ロアレースを補助してくれます」

ケン「アメジスト/ルビーに対してもキャラクター展開から《BE PREPARED》の一歩手前で《女王の城 – 鏡の間》をプレイすることで、ゲームに蓋をできるカード(勝敗を確定させる一手)。対戦相手に《BE PREPARED》によるキャラクターの退場か、ロケーションの対処か不自由な二択を迫ることができます。インクが伸びた対戦では1ターンで2枚を同時に出すこともありました」
本大会を終えての感想
──「大会当日の当たりはどうでしたか」
ケン「アメジスト/ルビーに6回当たり、5勝1敗でした。逆に苦手な青系には1回しか当たらず、しかも対戦相手の方の動きが悪くラッキーも重なり勝利しました。総じてメタゲームが大当たりでした。もう少しバラけるかなと思っていましたが、偏っていましたね」
──「《ロビン・フッド – 有能な戦士》は活躍しましたか」
ケン「9回戦でアメジスト/エメラルド アグロと当たり、出した瞬間に相手が頭を抱えだしました。相手の手札は意思力1のキャラクターばかりだったようで2ターン目に出してキャラクターを一掃しました。めっちゃ気持ちよかった、一番可愛いキャラクターです」
──「大会を通して、印象に残っているシーンなどはありますでしょうか」
ケン「試合前にグータッチしてたんですけど、自分の発案ではなく、予選ラウンドで対戦したフランス人のイルミニアの方に教えてもらいました。その方が対戦前にグータッチするのをみて、めっちゃいいなと思い、自分も取り入れました。これをやると皆さん対戦中も朗らかになって、笑いながらプレイできました。真剣ななかにも楽しさが生まれる感じで」

──「本大会の勝因はなんだったと思いますか?」
ケン「愛着があるデッキを諦めなかった、見捨てなかったことでデッキがめっちゃ応えてくれたに尽きます。デッキ選択理由でも答えましたが、使い慣れているデッキの方が愛着があるだろうし、良いプレイができると思います。長いラウンドを戦う想定ですと慣れていないデッキは疲れやすくミスをしやすい。アメジスト/スティールを選択できたことが勝因だと思います」
グランプリ王者として
──「さて、グランプリの王者となりましたが、次の目標などはあるのでしょうか?」
ケン「来年に開催される『ディズニーロルカナ 日本一決定戦 2026』を頑張りたいですね。楽しくプレイして、勝ち越しを目指したいです」

──「ディズニー・ロルカナ・TCGを始めようと思っている方へ一言メッセージをいただけますか」
ケン「昨日カードショップ大会へ行ってみたら、小学生が活躍していたんです。実際、今日のディズニーロルカナ グランプリにも小学生がいました。子供が大人に勝てることなんてほかに中々ないですよね?」
ケン「対戦に関してもイルミニアは基本的にみんな優しくて。対戦して負けたとして、悔しくはあっても楽しかったなと思える。終わった後にディズニーの話で盛り上がったりして。初心者に対しても同じくとても優しく教えてくれるはずで、その意識を強く感じています。総じて初心者に優しい環境が作られているのがディズニー・ロルカナ・TCGの特徴であり、凄さだなと。ディズニー好きという共通項があるからだと思います」
──「今後の大会では多くのイルミニアから目標となるわけですが」
ケン「ゲームなんで楽しく遊べるのが一番かなと。挨拶やグータッチにはじまり、会話を楽しむ。ディズニー・ロルカナ・TCGで遊ぶときはおしゃべりしながら遊ぶのが重要です。これからも真剣な中にも楽しんでプレイできるようにこころがけていきます」

ケン選手の言葉通り、ディズニー・ロルカナ・TCGは老若男女問わず、誰しもが楽しめるカードゲームです。今までカードゲームで遊んだことのない人もご安心ください。ディズニーの世界観があなたを包み込み、ディズニー・ロルカナ・TCGの虜にしてくれるはず。
それと同時に、奥深いゲーム性と戦略を持ち合わせています。デッキ構築に始まり、カード使うタイミング、チャレンジとクエストの選択など、対戦中は楽しくも頭を悩ませる展開が待ち受けています。
練習の成果を遺憾なく発揮したケン選手。デッキ選択からプレイの細部に至るまで気が行き届いており、ディズニーロルカナ グランプリの頂点を掴みました。全15回戦を終えてインタビューに応える姿は、まさに王者であり、今日の人である印象を受けました。
インタビューでも語っていた通り、ディズニー・ロルカナ・TCGにおいて大会へ持ち込むデッキ選択は面白くも難しい瞬間です。対戦が始まった瞬間から大会が終わるまで、変更はできないのです。だからこそ誰しも納得のいく選択をしたい。
ディズニーロルカナ グランプリ当日の朝6時まで悩んだというケン選手が出した結論は、デッキへの愛着でした。デッキ相性もありますが、長いラウンド数を戦うには使い慣れたデッキが最適であり、仮に負けたとしても納得できる。ケン選手にとってアメジスト/スティールは最高の相棒であり、優勝するに必要不可欠なデッキであったのです。
最良のデッキとともに、ケン選手はディズニーロルカナ グランプリの覇者となりました。
あらためて2000名のイルミニアの頂点に立った、勝者をここに讃えましょう!
「ディズニーロルカナ グランプリ 2025 Summer 東京」優勝はケン選手!!おめでとう!!


ライター:富澤 洋平 撮影者:福井 翔