夢限少女杯カバレージ準々決勝

おうか選手 VS 赤坂茜選手

この夢限少女杯の環境を定義づけるデッキの1つが【防衛派】だ。
センタールリグに《防衛者MC.LION-3rd》《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》の差はあれど、メタゲームを定義し、支配しているデッキである事実に変わりない。他のデッキタイプは「対【防衛派】をどうするか」が常に付きまとうし、【防衛派】を使う側に立ったとしても、同じデッキタイプとの対戦、つまり「ミラーマッチをどうするか」という事実を避けて通ることができない。

そんな【防衛派】同士のミラーマッチは、ディーヴァセレクションの歴史の中でも、非常に独特な対戦だ。
4ターン目、5ターン目、長くてもう1つ先が決着だったディーセレだが、【防衛派】ミラーはそのはるか先を行く。そしてその1ターン1ターンのやり取りの中には、「ライフクロスを何枚クラッシュする」「それに応じてアシストルリグをグロウさせる」以外にも、さまざまな要素が存在する。盤面を固める、手札を奪う、《サーバント #》を確保する……。2ターン、3ターン先を見据えた立ち回りが発生し、そこにライフバーストやドローが絡むと、果てしない数の選択肢が降り注ぐ。
そのゲーム性はもはや、ディーヴァセレクション、いや『ウィクロス』とは違う何かに近い、と言っていいほど独特……より踏み込むのであれば「異質」なゲームなのだ。

無論、この「異質」にネガティブなニュアンスはない。
描いたプランどおりにゲームが進む快感は比類ない。数多の選択肢から1つを選び、踏み込む瞬間のアドレナリンは脳を焦がす。
【防衛派】ミラーは果てしない知的遊戯であり、カバレージに書き残すにふさわしいマッチアップなのだが……真にそれを楽しめるのは、対戦テーブルに着く2人の特権といえよう。それほどに難解なゲームが繰り広げられる。

その特権を味わえる1人が、赤坂茜選手だ。
2022年12月「REUNION DIVA」発売のころから台頭し始めた、新進気鋭のプレイヤー。プレイ歴こそ浅いものの、すべてのフォーマットを遊び、関東エリアというレベルの高いセレモニーでも複数回の入賞歴を持つ。20歳という若さを武器にコミュニティにどんどん飛び込み、腕を磨き、経験を積んできたルーキーだ。
猛者集う夢限少女杯でも見事予選を勝ち残り、決勝トーナメント進出に名乗りを挙げた。リラックスしながらも、真剣な表情でバトルの開始を待っている。

迎え撃つのは関西の雄・おうか選手。2023年の「ディソナ杯」「フェゾーネ杯」で2度優勝し、前回の夢限少女杯でもベスト8に勝ち残った、関西トップクラスの実力者だ。リメンバやみこみこなどコントロール色の強いデッキを得意とするプレイヤーで、今回も盤石に勝ち上がっている。確かな経験値と練度を武器に、急成長中のルーキーを迎え撃たんとする。

長い長い、防衛派ミラーが幕を開けた。

おうか選手(タマゴ、LION、ハナレ)VS赤坂茜選手(タマゴ、ガブリエラ、バン)

先攻は赤坂茜選手。4枚のマリガンを終え、《幻水姫 アキノ//THE DOOR》をエナチャージし、センタールリグをレベル1へグロウ。まずはアシストルリグのガブリエラを《凛々!!ガブリエラ》にグロウさせた。
手堅くレベル1の《幻怪 エクス//THE DOOR》とレベル3の《羅星姫 ミュウ//メモリア》を手札に加えると、中央に《コードメイズ ムジカ//THE DOOR》を、エナゾーン側のシグニゾーンに《アイン=サンガ//THE DOOR》を配置。残るデッキ側のシグニゾーンに《ひらけ!ゲート!》で【ゲート】を開門してターンを終えた。順当な立ち上がりだ。

マリガンは悩んだ末に3枚のおうか選手。後攻の2ドローから《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》をチャージし、センタールリグをレベル1へグロウ。同じく《ひらけ!ゲート!》で中央のシグニゾーンに【ゲート】を開門だ。その上と、赤坂茜選手の空いたシグニゾーンの正面に《コードメイズ ムジカ//THE DOOR》を配置し、アタックフェイズへと移った。
中央の《コードメイズ ムジカ//THE DOOR》で、赤坂茜選手の《コードメイズ ムジカ//THE DOOR》をバニッシュすると、ライフクロスを割りにかかる。シグニアタックでまず1枚、ルリグでクラッシュされたライフクロスからは……《羅星 リンクス》だ。これにより、中央の《コードメイズ ムジカ//THE DOOR》がライフバーストで手札に戻る。

赤坂茜選手がターンを受ける。手札から《蒼天 ヒラナ//THE DOOR》をチャージして、センタールリグをレベル2へグロウ。
手札から2枚の《蒼魔 バン//THE DOOR》を配置し、アタックフェイズ。【ゲート】上に置かれた《蒼魔 バン//THE DOOR》1枚が、おうか選手の手札を1枚奪う。2点要求をおうか選手は通し、あっさりと2枚のライフクロスが割れた。
ルリグアタックはサーバントできっちりガード。ライフクロスは5枚どうしで、おうか選手が後攻2ターン目に進む。

「渋いなあ」とドローフェイズを終えてつぶやくおうか選手。
エナチャージをせずにセンタールリグをレベル2へグロウさせると、アシストルリグのLIONを《MC.LION-STANDUP》にグロウさせた。デッキの上から5枚を見ると「おっ」と小さく声を上げた。
「(赤坂茜選手の場の《アイン=サンガ//THE DOOR》のパワーは)7000かあ」「手札4枚ねえ」とぽつぽつとつぶやくと、手札を整え、《蒼天 ヒラナ//THE DOOR》を中央に、左右に《爆砲 WOLF//THE DOOR》を配置。続けてアシストルリグのハナレを《ハナレ//ダークスフィア》にグロウさせ、赤坂茜選手の中央の《蒼魔 バン//THE DOOR》のパワーを3000まで下げ、バニッシュをトラッシュに置き換えた。
アタックフェイズ。《蒼天 ヒラナ//THE DOOR》がパワー3000の《蒼魔 バン//THE DOOR》をバニッシュ……トラッシュに送り、左右の《爆砲 WOLF//THE DOOR》が、それぞれの正面に立つシグニのバニッシュをトラッシュ送りに置き換える。
赤坂茜選手はこれを通した。シグニがすべてトラッシュに消え、おうか選手のシグニとルリグが1枚ずつ、赤坂茜選手のライフクロスを奪う。レベル3にグロウする前に、赤坂茜選手のライフクロスは3枚まで落ち込んだ。

それでも動じる表情を見せない赤坂茜選手は、レベル3《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》にグロウ。おうか選手のセンタールリグを凍結させたところで、手を止めた。
まずはゲーム1能力で、自身のエナゾーン側のシグニゾーンに【ゲート】を開門。その上に《アイン=サンガ//THE DOOR》を立て、《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》でダウンさせて、おうか選手の手札を1枚奪う。続けて残る【ゲート】上に《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》を、空いた中央のシグニゾーンの上に《コードメイズ キヨステイ》を立ててアタックフェイズに入った。
シグニでの要求は0点。手札4枚のおうか選手は少し悩んだ後、これを通した。《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》が2枚の手札を奪い、《コードメイズ キヨステイ》《蒼天 ヒラナ//THE DOOR》をバニッシュ。ルリグアタックはせずに、エンドフェイズに《アイン=サンガ//THE DOOR》が残る《蒼魔 バン//THE DOOR》をデッキの底へ送ると、《アイン=サンガ//THE DOOR》《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》のパワーを16000に押し上げた。

ライフクロスこそ減らせなかったが、まずは盤面を作った赤坂茜選手。
ターンを受けたおうか選手。2ドローの後「渋いなあ」と首をかしげ、レベル3《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》へとグロウ。《ひらけ!ゲート!》で得たエクシードで4ドローすると、「おー……マジか……」と苦い声を漏らした。
《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》か16000か……。渋い……」とつぶやくと、《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》のゲーム1能力で、自身のメインデッキ側のシグニゾーンに【ゲート】を開門。その上に《蒼天 ヒラナ//THE DOOR》を、中央の【ゲート】の上に《コードアンチ マドカ//THE DOOR》を、残るシグニゾーンに《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》を配置。《コードアンチ マドカ//THE DOOR》《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》でダウンさせて、手札を1枚奪う。
アタックフェイズ。《コードアンチ マドカ//THE DOOR》《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》のパワーを5000下げ、《蒼天 ヒラナ//THE DOOR》《アイン=サンガ//THE DOOR》をバニッシュする。これでライフクロスを1枚狙いながら、《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》をバトルで処理することができるようになった。
赤坂茜選手はおうか選手のアタックを通す。《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》がバニッシュされ、クラッシュされたライフクロスからは《サーバント #》が見えた。赤坂茜選手はおうか選手の手札を5枚と確認すると、そのライフバーストで《蒼魔 バン//THE DOOR》を拾った。エンドフェイズ。おうか選手の手札に《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》《サーバント #》をもたらす。赤坂茜選手のライフクロスは、早くもあと2枚。

4ターン目。赤坂茜選手は《コードメイズ キヨステイ》をエナに送ると、アシストルリグのバンを《バン=ピアニッシモ》にグロウさせた。
【シャドウ】を持たない《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》をバニッシュしながら《サーバント #》を確保。その空いたシグニゾーンの正面に《幻怪 エクス//THE DOOR》を配置し、デッキトップ5枚から《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》を手札に加える。中央に《蒼魔 バン//THE DOOR》を置き、《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》でダウンさせ手札を1枚捨てさせ、残るシグニゾーンに《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》を置いて、アタックフェイズだ。
おうか選手はこの盤面に対し「致命的ではないけど……手札は(何枚)?」と赤坂茜選手に問うた。「6枚です」との返事に、おうか選手はシグニアタックを通す。
まずは《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》が2枚の手札を奪うと同時に、おうか選手の《コードアンチ マドカ//THE DOOR》が赤坂茜選手の手札を1枚奪う。続けて《幻怪 エクス//THE DOOR》でおうか選手のライフクロスをクラッシュすると、こちらからもまた《サーバント #》が見えた。「うーん……」と悩むおうか選手は、《爆砲 WOLF//THE DOOR》を回収。ルリグアタックはガードし、ライフクロスは未だに4枚を残している。

おうか選手がターンを受ける。2ドローを見て「渋すぎる渋すぎる」と嘆くと、場の《コードアンチ マドカ//THE DOOR》をチャージ。《幻怪 エクス//THE DOOR》でデッキの上から5枚を見ると、「さすがにね」と、待ち望んだ《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》を手札に加えた。
その《幻怪 エクス//THE DOOR》《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》でダウンさせて手札を奪うと、【ゲート】上に《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》《爆砲 WOLF//THE DOOR》が配置され、アタックフェイズへと移行。中央の《蒼魔 バン//THE DOOR》がトラッシュ送りを予告される。赤坂茜選手はこれを通した。バトルで中央のシグニが消え、手札も2枚奪われる。ルリグアタックはガードできたが、ライフクロスの枚数は劣勢だ。

先攻5ターン目。
本来のディーセレであれば決着が見えるターンだが、両者のライフクロスは多く、アシストルリグは左右ともレベル1のまま。防衛派ミラーは、ここからが中盤戦だ。
赤坂茜選手はエナチャージをスキップすると、中央に《羅星姫 ミュウ//メモリア》を配置。《蒼天 ヒラナ//THE DOOR》を回収するとそのまま《羅星姫 ミュウ//メモリア》の下敷きにした。残るシグニゾーンには、青緑のバニラシグニ《幻水 アマケロン》を配置した。
アタックフェイズ。《羅星姫 ミュウ//メモリア》がおうか選手の《幻怪 エクス//THE DOOR》を除去し、1点要求を作り出す。おうか選手はやや悩んだあと、「いいでしょう」とその要求を通した。
《幻怪 エクス//THE DOOR》のアタックで割れたライフクロスからは《コードアンチ マドカ//THE DOOR》が、続くルリグアタックでは《コードハート リメンバ//メモリア》が飛び出した。手札を一気に3枚増やしたおうか選手。ライフクロスは2枚どうしと追いついたが、リソース差がさらに開いていく。

そしてこの辺りから、防衛派に迫るのが「リフレッシュ」だ。
おうか選手のデッキは、ターンを受けて残り5枚。《カウントダウン・ヒールズ》《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》など、トラッシュを起点とするカードが多い防衛派にとって、トラッシュの消滅は戦局の変わり目につながる。先程の赤坂茜選手のルリグアタックをガードしなかったのも、サーバントがなかった可能性に加え、「リフレッシュ前のライフクロス調整」という意図も含まれる、かもしれない。
おうか選手は中央に《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》を、ゲート上に《蒼魔 バン//THE DOOR》を、残るシグニゾーンに《アイン=サンガ//THE DOOR》を配置してアタックフェイズへと入る。《蒼魔 バン//THE DOOR》が手札を奪ったところで、赤坂茜選手が間髪入れず、アシストルリグを《バイバイ!!ガブリエラ》にグロウさせた。
当然、すべてのモードを使う。《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》の能力を消し、トラッシュからサーバントを回収。これにより、このターンのおうか選手の攻めを0点に抑え込んだ。バトルと《蒼魔 バン//THE DOOR》の能力で《羅星姫 ミュウ//メモリア》《幻水 アマケロン》は失ったが、《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》によるサーバント回収も封じる。アシストルリグで防衛派をしっかりと対策している様子が垣間見える。

先攻6ターン目。手札0枚からの2ドローのうち1枚、《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》をエナチャージ。デッキの枚数をさっと確認した赤坂茜選手は、《ひらけ!ゲート!》で得たエクシード4で、4枚の手札を確保する。「ちょっと考えます」と、ここで初めて、長考を告げた。改めて状況を確認し、未だに続くバトルの展開を描く。
まず、これまで戦線を維持した《幻怪 エクス//THE DOOR》《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》でダウンさせ、おうか選手の手札を1枚減らすと、中央に《蒼魔 バン//THE DOOR》を、残る【ゲート】上に《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》を配置。アタックフェイズに入り、手札を潤わせた。
おうか選手に問われた手札とデッキの枚数に、それぞれ「4枚」「5枚」とはきはき返す。おうか選手は「うーん……しゃーないねえ」と、またもこのアタックを通した。《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》の手札破壊とルリグアタックが通り、《蒼魔 バン//THE DOOR》《アイン=サンガ//THE DOOR》をデッキの底へ追いやる。おうか選手のライフクロスは残り1枚。赤坂茜選手がライフクロスで逆転した。

しかしおうか選手は動じない。ターンを受け、ここで飛び出すのは《中罠 ゆかゆか//ディソナ》だ。
その能力で《サーバント #》を回収すると、残る【ゲート】上に《アイン=サンガ//THE DOOR》を配置し、《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》でダウンさせ、手札を奪う。アップ状態のシグニが《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》のみでアタックフェイズだ。
止める理由もない。赤坂茜選手の《蒼魔 バン//THE DOOR》がバニッシュされ、ルリグアタックも通る。そして《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》をデッキボトムへ追いやり、《サーバント #》を回収してターンを終える。ライフクロスは互いに1枚。

赤坂茜選手の先攻7ターン目だ。ドローフェイズの後、お互いがお互いのトラッシュを確認する時間に入る。互いのメインデッキのほとんどが公開領域に送られており、ここから互いの残りの攻め手を、じっと見定めていく。
互いの状況確認を終え、赤坂茜選手は、【ゲート】上に《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》を配置すると、それを《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》でダウンさせて手札破壊。《幻怪 エクス//THE DOOR》と共に立てたシグニは、《翠美姫 コンテンポラ》だ。赤坂茜選手からはやや前のめりに、クロックを刻もうとする姿勢が見える。
アタックフェイズ。《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》《中罠 ゆかゆか//ディソナ》をデッキボトムに追いやる。おうか選手は数旬悩み、このアタックを通した。ルリグアタックはガードするも、とうとうライフクロスがなくなった。が、アシストルリグは左右ともレベル2が残る。

おうか選手は場の《アイン=サンガ//THE DOOR》をエナチャージし、ゲートのないシグニゾーンに《幻怪 エクス//THE DOOR》を配置。能力で《蒼魔 バン//THE DOOR》を加えると、はたと手を止めた。
「なんだあれ」「手札3枚ですよね」「エクシードは使った」「《翠美姫 コンテンポラ》は2以下【シャドウ】」と、ぽつぽつと状況を整理する。メインフェイズにアシストルリグの《ハナレ//フォービドゥンファング》にグロウする選択肢もよぎるが、《翠美姫 コンテンポラ》の【シャドウ】がそれを許さない。しばしの検討を経て、「仕方ない、手札削るか」と、《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》でダウンさせたところで。

赤坂茜選手の手札からトラッシュに落ちたのは《羅菌 アメーバ》だ。1ドロー。ここまで一切見えなかった手札破壊対策カードが飛び出した。
おうか選手の表情は読めない。が、目の色がやや変わったようにも見えた。《幻怪 エクス//THE DOOR》以外をリムーブし、《蒼魔 バン//THE DOOR》《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》をそれぞれ【ゲート】上に配置。そしてピース《カウントダウン・ヒールズ》で、防衛派の《幻怪 エクス//THE DOOR》《蒼魔 バン//THE DOOR》《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》をトラッシュから手札に加えた。
アタックフェイズ。赤坂茜選手の《幻怪 エクス//THE DOOR》《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》によってデッキボトムに消える。赤坂茜選手の手札に《サーバント #》はあるため、防御のアクションは不要だろう。《蒼魔 バン//THE DOOR》の手札破壊で、赤坂茜選手は《サーバント #》を捨てた。2枚持っていた様子だが、リフレッシュ間近でサーバントを手放す理由は……。

《イノセントバトル》。対象自分」

「なるほど!」と応じるおうか選手を前に、自分自身のトラッシュをデッキに戻した。
リフレッシュから遠ざかり、サーバントとの遭遇率を上げ、《幻怪 エクス//THE DOOR》での再ドローも可能にする……。ライフバーストを互いに確認した後、《イノセントバトル》で1ドローし、おうか選手の攻撃を受けた。互いのライフクロスが0枚。一気に終局が見えてきた。

8ターン目。赤坂茜選手は分厚くなったデッキから解答を探す。
【ゲート】の上に《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》《コードメイズ ムジカ//THE DOOR》を、ゲートのないシグニゾーンに《聖天姫 エクシア》を配置し、アタックフェイズへと入る。
ライフクロス0枚の《聖天姫 エクシア》は嫌ったか、おうか選手はアシストルリグ《ハナレ//フォービドゥンファング》で速やかにこれを除去。ルリグアタックは防ぐも、《コードメイズ ムジカ//THE DOOR》《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》を消し、《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》《サーバント #》をもたらした。

おうか選手のターン。地上に残る《幻怪 エクス//THE DOOR》《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》でダウンさせると、赤坂茜選手の手札からは、またしても《羅菌 アメーバ》が飛び出した。その1ドローで耐え凌ぐ。が、赤坂茜選手に残された防御はアシストルリグのバンのみだ。
リソースで優位に立ったおうか選手がじりじりと追い詰めていく。《中罠 ゆかゆか//ディソナ》《サーバント #》を回収するとすぐさまそれをリムーブし、【ゲート】上に《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》を配置し、アタックフェイズへ移行。《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》《コードメイズ ムジカ//THE DOOR》を消し飛ばし、王手を告げる。
赤坂茜選手は残るアシストルリグ《バン=ダカーポ》でダメージを防ぐも、手札が《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》に奪われていく。ゲームエンドは遠ざけた、が。

先攻9ターン目。
赤坂茜選手のドローは《羅星姫 コスチュム//THE DOOR》《蒼天 ヒラナ//THE DOOR》。十分な火力札だ。
2面要求こそ可能だが、おうか選手の《MC.LION-DISRESPECT》がそれを許さない。ルリグアタックも、言うまでもなく通らない。

後攻9ターン目。
「手札、それだけですよね」というおうか選手の確認と共に、《蒼魔 バン//THE DOOR》《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》の軍勢が、赤坂茜選手の手札を食い尽くす。ルリグアタックの一撃が、長い戦いに幕を閉ざした。


勝者 おうか選手!!

「最初の2ターンが痛かったー!」
赤坂茜選手が堰を切ったように声を上げた。

「序盤でガードできれてばなあ……。あの2点がなければ、《イノセントバトル》を相手に撃って《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》で拾うサーバント消せたし、《中罠 ゆかゆか//ディソナ》も封じられたし……。3〜4ターン目ごろの《幻怪 エクス//THE DOOR》の5ルックでサーバントが2枚下に行って、あ、これって、こういう展開なのね、って……」
悔しさとやりきれなさと、充足感をにじませる彼の言葉を見るに、このゲームの分水嶺は最初の2ターン、赤坂茜選手がルリグアタックをガードできなかった点にあったということだ。

「サーバントがなくなると《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》を立てて回収しなきゃなんで」
おうか選手が言葉を続けると、
「そうなんですよ。ミラーになると《幻獣神 LOVIT//THE DOOR》をどれだけ立てないようにするかが大事で、もっと言えば【ゲート】の上に《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》をどれだけ立てられるかのゲームになるから、お互いにノヴァあんまり見えてないのもあったし、その分構築で有利に立ててたはずなのに、あー……。すべては序盤のサーバント行方不明につながるんだあ」
と、どっと自らの敗因を語る赤坂茜選手だ。

「先に手札を刈り取れれば勝ちなんですけど。今回はお互いに《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》があまりいなくて、毎ターンガードできるし、でも《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》がいないから手札も増えない、っていうゲーム展開でしたよね」
「そう! だからライフバーストのマドカ(《コードアンチ マドカ//THE DOOR》の3枚ドロー&1枚捨て)がヤバすぎて、うわあって……」

と、白熱の感想戦は、おうか選手が準決勝のテーブルに呼ばれるギリギリまで続いた。

おうか選手が離席する直前、筆者が赤坂茜選手の年齢を20歳と確認すると、おうか選手がうなった。
「将来有望だなあ」というその声は、決着の瞬間よりもどこか嬉しそうに聞こえた。
難しいバトルを堂々と戦い抜き、夢限少女杯ベスト8の実績を得た赤坂茜選手は、間違いなくこれからのウィクロス競技シーンを背負うプレイヤーの1人となるだろう。負けはしたが、その表情は清々しくも見えた。また強くなり、この舞台へ帰ってくるはずだ。

そんな彼の分まで、おうか選手は頂点へと歩みを進めていく。
準決勝で待ち受けるのは、夢限少女杯では3度目の対戦となる因縁の相手。初代夢限少女・シロネコ選手だ。
戦績は互いに1勝1敗。負けられない戦いが、まだまだ彼を待ち受けている。

タカラトミーモール