【バトル攻略コラム】

ウィクロスアカデミー

【デッキ解説】てらたか 黒-白黒ウムル軸ウトゥルス

はじめに

THE DOOR杯、夢限少女杯と2つのイベントが終了し、未だ10周年前夜祭という特大イベントが控えているこの3月。末端木っ端プレイヤーである僕の記事にまで目を通してくださっているような『ウィクロス』好きの皆様なら、きっと滅茶苦茶『ウィクロス』をエンジョイしていることでしょう。
初めましての方は初めまして、そうでない方はカードレビューのコラムぶり。……ということは、あまり記事を書かない僕にしては珍しく1か月以内での再会ですね! ウィクロスアカデミーでときどきライターを務めている「てらたか」と申します。

さて、先ほど話したイベントのうちひとつ「夢限少女杯」。昨年度はカバレージライターとして会場の空気を吸った僕ですが、ディーヴァグランプリでとんとん拍子にベスト4まで勝ち上がれた今年度は、昨年度から一転プレイヤー側として参加。前回はどこかちょっと他人事のようだった本番のピリピリした緊張感を、今回は自分のものとして味わってきました。

結果としては序盤で知人のタウィルを2連続で踏み、想定してたとおりの負け筋で負けていく……という少々不甲斐ない結果に終わってしまいましたが、ここで『不甲斐ない結果に終わった大会の直後にライターとしての仕事が爆誕する』といういつものジンクスが発動。旧ライター、現スタッフのしみずき氏より“結果自体ではなく思考や取り組み方の開示に大きな意味がある”というありがたいお言葉をいただき、今回使用デッキ解説記事の筆を執ることとなりました。

というわけで今回は、僕が使用した【黒-白黒ウムル軸ウトゥルス】についてと、なぜこのデッキを選んだのかについて解説させていただきたいと思います。微力ながら、同じルリグを使おうとしている方や調整時の考え方が気になる方などの力になれれば幸いです。
解説だけ気になる方は前半の『1.環境読み』『2.デッキ選択』を飛ばして『3.デッキ解説』から読んでくださいませ。

1.環境読み

環境読み、すなわち“どういうメタゲーム環境なのかを推測して、それに強いデッキを持ちこむ”という考え方は、大会を勝ちに行く際には重要な項目のひとつ。
とりわけ、3月に入ってからセレモニー・パーティーどちらも1回ずつしか参加できず実践の面で他の参加者より大幅に遅れを取った僕からすると、ここの推測の精度は他プレイヤーとの差を覆す大きな要因となり得るものです。

そんな環境読みですが、僕はおおまかには「現在のメタゲームを把握する」→「環境の性質を判断する」というステップでメタゲームを推測して行くことが多く、今回もそういった流れで読んでいきました。

夢限少女杯直前のトップメタは何だったか?

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この点については、おそらくあらゆる人が口を揃えて「防衛派がトップメタだ!」と言うのではないでしょうか。
前弾環境における権利戦の終盤からTHE DOOR杯に至るまで、大型大会の上位卓で《羅星姫 ノヴァ//THE DOOR》はいつも誰かの手札を2枚捨てていましたし、《ひらけ!ゲート!》はもう世界中で星の数ほどのゲートを設置したことでしょう。防衛派のシェアはディソナや闘争派・解放派と比べても間違いなく高く、他の追随を許しませんでした。

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そんな中でちょっとずつ《扉の俯瞰者 ウトゥルス》軸のデッキが数を増やしてはいましたが、結論としては防衛派がトップにいることを前提として環境が構築されていることは間違いなさそうだった、と結論付けられます。

とまあ、適当に大型大会の成績を振り返ってみれば30分ぐらいで判明する「現在のメタゲーム」なんてものは、環境読みではなく実は“環境読みをするにあたっての前提の情報“に過ぎません。
これに加えて環境の性質を判断することで、やっとメタゲームの動きが推測できるようになります。

環境の性質を判断する、とは?

例を出さずに説明するのは難しいので、ここでは過去環境から実例を引っ張ってきて話してみようと思います。

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昔、原子デウスと呼ばれるデッキがありました。
当時のカードパワーからすれば破格の点数要求能力を持つ《デウス・スリー》、抜群のリソースコントロール能力を持つ《羅原姫 H2O》。これらを組み合わせたこのデッキは間違いなく当時の環境トップに君臨しており、一大シェアを誇っていました。

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つい最近のことですが、白青アズサと呼ばれるデッキがありました。
《猫塚ヒビキ》《剣先ツルギ》といった相手の行動を締め付けるカードを大量に搭載したこのコントロールデッキは、ブルーアーカイブ環境で真っ先に環境に姿を現し、大きなシェアを獲得しました。結構な数の夢限少女杯予選でこのデッキが使用率1位になっていたことは記憶に新しいです。

原子デウス、白青アズサ。これらはどちらも当時のメタゲームでトップシェアになり、勝ち上がるうえで意識せざるを得ないデッキでした。
では――原子デウスがトップメタにいた環境と、白青アズサがトップメタにいた環境は、同様のメタゲーム推測をしていいものでしょうか?


答えは、“駄目です”。


原子デウスは、言ってしまえば当時の“結論デッキ”とも呼べるものでした。なんだかんだ原子デウスの対応力が一番高く、原子デウスに勝てるデッキの種類もそれほど多くない。上位に行けば当然原子デウスと当たるので、その前提でデッキを組まなければいけなかったのが、原子デウスがトップだった頃の環境です。

一方で白青アズサはというと、別に勝てるデッキはたくさん存在していたんです。
ディソナルリグ達はデッキパワーで白青アズサに劣ることもなく、ひとつ前の環境にいた《カオス!chaos!混沌!》軸のタマや原子アロスといったデッキだって、問題なく戦える。あくまで、いろいろな人がブルアカの研究に着手した結果として、最初に戦えるラインまで押し上げられたのが白青アズサだったというだけでした。
白青アズサが弱いデッキというわけではありませんでしたが、逆に飛び抜けて強いわけでもないし、なんならメタを張れる多種多様なデッキに食い物にされがち。そんなメタゲームでは、どちらかといえば「上位卓では白青アズサをしっかり乗り越えてきたデッキと戦う」ことを前提にメタゲームを推測しなければなりません。

また、今回は新環境前半だったため通用しにくい考え方でしたが、「メタゲームが固まっているかのように見えて、実際は脆弱性がある」というような例もあります。
直近だと、ディーヴァグランプリ7th環境なんかが分かりやすいでしょうか。

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当時、環境は5ターン以降のゲームレンジを前提としたデッキが大量にいました。
《カオス!chaos!混沌!》を軸にしたタマや原子アロスが多い中、そのゲームターンに対応するかのように《黒点の記憶》を採用してゲームを後ろに伸ばせるようにしたディソナナナシがトップシェア。その下にも基本は4面防御ぐらいが前提のディソナ軸みこみこやピルルクがおり、環境における早いデッキの主流だった花代や遊月は《ゼノ・クラスタ》でかなり対応してしまえる。
大多数の人が考えるメタゲームはそんな感じだったでしょう。

けれどこの環境は、実は「アグロデッキのサンプルが2か月前ぐらいの花代や遊月からまったく変わっていない」という致命的な脆弱性を抱えていました。
2度に渡ってリソースを大型破壊するだとか、手札もエナも両方破壊するだとか、そういう《ゼノ・クラスタ》一発では止まりきらないデッキへの対処手段を持つデッキが非常に少なかったんですね。

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この脆弱性が放置された結果、ディーヴァグランプリ7thで本命とされていた5ターン以降のゲームレンジのデッキはすべてhyakko選手の《GO TO the TOP!》採用型ディソナみこみこに撫で切られ、シロネコ選手は《デス・ビーム・ディーヴァ》採用型のディソナピルルクでベスト8まで駆け上がることとなり、僕は運よく《不穏☆FU☆ON!》型のディソナヒラナでベスト4に滑り込むことができたわけです。

環境をひとつひとつ取り上げても、その性質は毎回異なります。
ざっくりと、トップメタが“結論的”な環境ならば優勝には「トップメタかそれに勝てる構築」を使うことが望ましく、一過性の環境ならば優勝には「一過性のトップメタを乗り越えたデッキに勝てる構築」の方が望ましいことが多い。そして、環境にいるデッキがどちらを向いて調整されたデッキで、どういう欠点があるかも使用デッキの判断に影響を与える……。
ここらへんの事情を把握し、自分の使用デッキを考えていく。これが「環境の性質を判断する」ことであり、環境読みにおいて肝要なことだと僕は考えています。
(あくまで僕の環境読みの方法なので、参考程度でお願いします)

結果として、今の環境をどう判断したか?

というわけで、防衛派をトップとした現在のメタゲームがどういった性質を持っているかを判断する必要があるわけですが――結論から先に話してしまうと、僕の中での最終的な判断のうちひとつが『防衛派は別に飛び抜けて強いデッキではない』というものでした。
お前、防衛派が優勝準優勝したんだから明らかにそれはメタ読みミスだろ、と思われるかもしれませんが、何なら今でも防衛派が最強のデッキだとはあまり思ってません。

というのも、実は防衛派って割といろんな種類のデッキ相手に普通に結構負けるからです。

リソース破壊や耐性盤面の上から点数を取っていける闘争派、《UNKNOWN MEMORY》《真紅の熱線》を絡めて充分なリソース破壊を達成する前に殴り切る赤単のようなデッキに対応しきれない展開が散見されるのはもちろんのこと、(僕が確認した範囲では)最近数を増やし出したウトゥルス系のデッキに大きな有利が付いているわけでもないし、《扉の俯瞰者 タウィル=トレ》の状態でパワー8000以上のシグニを並べられてパワー+1000込みで盤面を固められると防衛派LIONは最大の利点であるダメージクロックが鈍化してしまう。

実際問題として、とある日に防衛派を使った某元ウィクロスアカデミーライターが0-8を喫したなんていう裏話もあり、防衛派を結論的なデッキという位置に置くのは(ひいては防衛派に対してのみ滅茶苦茶強いようなデッキを使うのは)ちょっとなあ、という印象でした。

ただ、夢限少女杯という環境や防衛派に有利が付くデッキの立ち位置という所まで加味すると、『防衛派は通過点と位置付けていいほど弱いデッキではない』ことも確か。
なにせ、防衛派が登場するより前に市民権を得ていたデッキに対して防衛派は強く出やすいという立ち位置におり、なおかつ『ウィクロス』のメタゲームは変化する速度が遅い。
そして、夢限少女杯は参加プレイヤーが完全に固定化されており、中にはいつも特定のルリグを使用しているプレイヤーも一定数います。人読みで使用デッキを何人分か推測し、それにメタゲームの変化速度まで加えて考えると、決勝トーナメントまでに防衛派がいなくなることはほぼないだろうと推測が付きました。
なんだかんだでデッキ分布は「防衛派>ウトゥルス系>ディソナ≧赤系アグロ>その他」予想で、ここから多少ぶれることはあっても大外しすることはないだろう、という具合ですね。
存在しなさそうなデッキを推測するのも重要で、今回の場合「闘争派や解放派はほぼ無視してよく、時折姿を見せる原子軸やコラボ系のデッキもそれほど注視する必要はなさそう」という前提も置けました。

まとめると、最終的には「防衛派を一点読みでメタるほど対防衛派重視のデッキは選べない」「が、防衛派に弱いデッキも当然選べない」「人読みで分布やばらけ方をいくらかは推測できる」→「防衛派にそれなりに勝率が付きつつ、防衛派と同じ弱点を持たないデッキを選択しよう」の思考でデッキを選んでいくこととなります。

2.デッキ選択

大型大会で使用するデッキを選択する際、単純なデッキパワーや環境読みを含めるのはもちろんのこと、それ以外の指標として僕は『自分にかかる思考負担をできる限り軽減できること』『相手の対応手が固定化されないこと』という基準を優先することが多いです。

  • 単純にゲームスピードが速い、あるいは毎回のプレイに大きな差の生まれないデッキ
  • イージーウィンを拾いやすく、相手にイージーウィンを拾われにくいデッキ
  • ある程度手になじんだ、理解度の高いデッキ

もうちょっと細かく分けていくと、こういった要素を含むデッキ。

これは、「対面も自分も人間なのだから、お互い思考力には限界値がある」という点を僕が非常に重要視しているためです。
どれだけたくさん出たところで大型大会ともなれば緊張しますし、精神的に追い詰められればミスをする確率だって高くなるもの。であれば、自分の思考負担がなるべく少なく、相手に与える負荷が多くなるようなデッキを選んだ方が良いのは言うまでもありません。

「相手への思考負担を大きくしてミスを誘発させる」という考え方は、不得手なデッキに勝とうとする際明確に意識すべき点のひとつでもあります。

夢限少女杯1週間前、すなわち『THE DOOR杯』が終わって環境読みに入る直前の段階で残っていた候補デッキは『黒ウムル軸ウトゥルス/解放派エルドラ/青ウムル(ウトゥルス)/フェゾーネアン/ディソナ花代』の5つ。
練習時間があまりない分の差を埋めるべく、新弾から組めるデッキは1つだけに絞り込み、残りの候補は過去に類似デッキを使ったことがあるものの中から環境で使うに値する理由がありそうなものをピックアップして重点的に調整する形にしていました。

そんな候補デッキの中から、環境読みの結果を受けて『青ウムル(ウトゥルス)/フェゾーネアン/ディソナ花代』が順番に消えていきます。

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前2つのデッキが消えた理由は「防衛派に滅茶苦茶強く出られる要素(《奏救の鍵主 ウムル=トレ》のゲート破壊、《翠美姫 アン//ディソナ》《盛夏の成果 アン=サード》のシャドウを利用したリソース破壊や除去への抵抗力)があるが、メタゲーム上にいるその他のデッキに対しては他候補デッキより一段劣る」タイプのデッキだったためです。
その一方で、花代は「かなりの相手に強く出られるが、防衛派に対しては強く出にくい」という逆の性質を持っていたために使用候補から消すこととなりました。

大型大会に持っていくデッキを選別する場合、「そのデッキを使用する価値はどこにあるのか?」という点を覚えておくと、求めるものが定まった際に取捨選択がしやすくなります。今回は「“防衛派にだけ強く、他へのガードが落ちる”も“防衛派に弱い”も優勝を狙うのには不適格」であったため、これらの特徴を持ったデッキが弾かれたということです。

というわけで残ったデッキは『黒ウムル軸ウトゥルス/解放エルドラ』となり、最終的には前者を持ち込むに至りました。
デッキ相性は「対防衛派は相手の構築によりつつも五分~微有利、ミラーはおおよそ五分でタウィル相手は微不利、ディソナ系には序盤で作れるパワーライン次第、その他手札破壊系には結構戦いやすくリフレッシュが早期な相手は苦手寄り」くらいの想定。

この点について、結構な人から「どうせお前はウムル好きだからウムルを持ち込むだろ?」みたいなことを言われたんですけれど、開催1週間前までは全然エルドラを使おうと思っていましたし、前日の夜まで最終決断は下せずにいました。
最終的には、1枚のカードが絡んだとあるゲームプランが、ほんのちょっとだけ天秤をウムル側に傾けることになります。

6000文字も書いて未だにリスト本体に触れていないというヤバい長さの前置きになってしまいました。そろそろデッキの解説に移りましょう。

3.デッキ解説-『黒-白黒ウムル軸ウトゥルス』

センター:ウトゥルス(ウムル) アシスト:LION、ウリス

デッキの制作経緯

ウムルは《扉の俯瞰者 ウトゥルス》を利用すべきという論については前回カードレビューの際に話したので、そこは割愛します。

①まずそもそも、僕は昨年1年間をとおして『赤-青黒ディソナ花代』『赤-青緑ディソナヒラナ』『青-白黒《スプラッシュフィールド》型あや』など「3面要求の継続+3~4面防御+追加打点か追加防御」というデッキを使い続けてきました。

『黒ウムル軸ウトゥルス』は『白タウィル軸ウトゥルス』と比べれば明らかに攻撃的であり、基本は毎ターンの3面要求を理想とするミッドレンジ寄りのデッキ。
直近で手になじんでいるのが追加打点系のデッキであるため、今回も追加打点を準備したかったのですが、《扉の俯瞰者 ウムル=トレ》の効果の関係で手札破壊やエナ破壊からの追加打点を組み込むのは至難を極めます。
《NEXT GATE》《UNKNOWN MEMORY》がほとんどの場合でピース枠を埋めてしまうということも相まって、ストレートに狙える追加打点は《惨之遊姫 グズ子//メモリア》のライフクラッシュを除くと《ウリス・アフリクト》《アルフォウスプラッシュ》を絡めたリフレッシュぐらいでした。

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というわけで《ウリス・アフリクト》を横に置き、リフレッシュを追加打点として扱える形を目標としながらデッキ構築を開始。


②ただ、《ウリス・アフリクト》を入れることによる弱点は結構明確でした。

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《扉の俯瞰者 ウトゥルス》はグロウしてから2ターン以上生存しないと優位性が最大限に発揮できないというのは、既に何回も語られている話。当然このデッキも最終グロウから2ターンは戦えるように構築する必要があり、片面が《ウリス・アフリクト》である以上もう片面は大型防御であることが望ましいです。

けれど、リフレッシュルートのためには《ウリス・スケアー》も採用しなければならないため、もう片面には序盤のリソース供給枠という役割も課せられます。
ここで《マドカ//フロート》を採用すると青シグニを入れなければ3点防御が成立しませんし、青以外のルリグを採用するとサーバントの供給が安定しません。Lv1で《サーバント #》が供給できる+白黒以外を使わずに実質3点防御になり得るアシストはタマ・ガブリエラ・ミルルンなどがいますが、白タウィル軸ほどシグニが盤面に残ってくれる保証がないため、《タマ・しーるど》《バイバイ!!ガブリエラ》が大型防御として十分に機能するかは怪しいです。
グロウコストが重く、そもそもグロウできない状況さえ発生しうる《ミルルン☆フラッシュ》に防御を任せるのも、ちょっと防御としての信用度が低そうでした。

③そこで目を付けたのが、新弾で登場した《羅星 ノヴァ//フェゾーネ》

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《MC.LION-DIG》から繋がりつつ《サーバント #》の確保率向上に大きく役立ってくれるこのカードのおかげで、《ウリス・アフリクト》とガード供給の両立がかなり現実的なものに。

土台となるギミックが決まったので、後は《扉の俯瞰者 ウトゥルス》の効果を最大限発揮できるようさまざまな状況に対応したカードを挿してゆき、デッキの形に纏めました。

デッキコンセプト・回し方のコツ

《扉の俯瞰者 ウムル=トレ》《扉の俯瞰者 ウトゥルス》による圧倒的な盤面の再現性をバックに、相手に最も有効なシグニを何度も展開することで戦っていく」。基本的な黒ウムル軸ウトゥルスのコンセプトは大体これに集約されます。
毎ターンの複数蘇生は、まるで場に不可視の《コードアンシエンツ ヘルボロス》がいるかのように抜群の安定感を誇ります。高パワーの相手には無条件に除去になる《コードアンシエンツ イオナ//メモリア》で、守りたい時には《聖天姫 エクシア》で、パンプで耐えてくる《聖将 トキユキ》や防衛派の下級シグニには《ドライ=ハナレ//フェゾーネ》でと、随時有効な戦力をトラッシュから引っ張り続けて戦いましょう!

……というコンセプトが十分力を発揮するのは、ルリグが起動効果を持つようになる3ターン目以降の話。中盤以降強いデッキは、下準備の期間をどうやって過ごすかが一番大事です。


①マリガンの優先度は《サーバント #》《羅星 ノヴァ//フェゾーネ》が最優先。
次点で、先手なら《コードアンチ サルノテ//ディソナ》を1枚、後手なら《羅菌 オイゴナ》を1枚初手に持てればそれが最善です。

このデッキは最終グロウから2ターン=合計5ターン以上ぐらいのゲームレンジで戦うという話をさっきしましたが、《ゼノ・クラスタ》もなければ白ほど盤面も強力ではないデッキである以上、「何もせずとものうのうと5ターン目ぐらいは迎えられるでしょ」と日和見してしまうのはあまりにも危険です。
スピードの速いデッキの4ターン目を乗り越えるために、ある程度の努力は必須になってきます。

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特に、「1ターン目に《サーバント #》を抱える努力をする」「《羅星 ベレニケ》などの蘇生系ライフバーストを有効化する」というポイントぐらいは抑えておきたいところです。
《MC.LION-DIG》からの始動をするこのデッキは《マドカ//フロート》と違ってトラッシュをアシストから準備することができないので、先手なら《コードアンチ サルノテ//ディソナ》を、後手なら《羅菌 オイゴナ》をできるだけ使うようにしましょう。

手札を大量に抱える必要がないような相手なら、適当なシグニを場に出してリムーブしてでもLv1シグニをトラッシュに準備した方がいい場合さえあります。生き抜く努力は1ターン目から、欠かさず行なってください。


②手札を刈り尽くされた場合を除き、毎ターン必ずエナチャージを行いましょう。
《扉の俯瞰者 ウトゥルス》の効果が1エナを盤面1に変換する効果であり、手札のだぶついたカードが全部トラッシュで一番強いカードになるのがこのデッキ最大の強みです。エナを加速してくれるカードはほぼ入らない割にエナが足りなくなると一気に動きが鈍るため、毎ターンの手置きが非常に重要になってきます。

また、初手のエナチャージは攻撃を耐え抜く企業努力のひとつでもあり、《中装 バックラー》のライフバーストを有効化するためになおのこと必須。


《ウリス・アフリクト》などで白エナを無駄に吐かないようにしましょう。
落ち方が悪くてトラッシュの黒10枚が達成できなかったり、《極門天姫 ヨグニグラ》のサーバント回収とアシスト防御用の白が両立できなくなったりして、結構痛い目を見ることが多いです。
黒なんてその後いくらでも増えていきますし、そもそも《扉の俯瞰者 ウトゥルス》になればエナから吐く色は調節できるので、「なんかエナ色が汚い」ぐらいの適当な理由で白エナを序盤に吐くのはやめておくべきです。


④盤面の最適解は対面や公開領域にあるシグニ、さらにはデッキの残り枚数なんかも加味するといつも変わってきます。

あたりを意識して盤面を構成していくと、多分大外しはしないはず。

カード解説いくつか

全部解説しているとキリがないので、従来の黒ウムル軸ウトゥルスにあまり積まれていなかったカードのみピックアップして話します。

  • 《羅星 ノヴァ//フェゾーネ》

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いつもデッキ解説をする際はライフバーストから解説していくのですが、今回はこのシグニから解説した方が後々の解説が楽なのでここから。
前述のとおり、リフレッシュ+4面防御+ガードの安定供給を全て成立させるに至ったキーパーツのひとつがこのシグニです。

白タウィル軸ウトゥルスにも最近採用されているカードであり、もちろんガード供給が主な役割なのですが、今回のデッキでは「デッキを4枚も見て、3~4枚をデッキボトムに積み込める」という性質も大事になってきます。

例えば先手の際、
《MC.LION-DIG》《羅星 ノヴァ//フェゾーネ》でデッキを9枚見て6~7枚をデッキボトムに積み込む
《扉の俯瞰者 ウムル=トレ》《ウリス・アフリクト》《コードアンチ サルノテ//ディソナ》でデッキを合計10枚トラッシュに送る
・先手の場合、3ターン目までにターン開始時ドローを合計5枚分行ない、《UNKNOWN MEMORY》で2ドロー2エナチャージを行なう

という一連の動作を行なうと、“9枚のルック+10枚のデッキ落とし+9枚のドロー+エナチャージ”。3ターン目の段階で28枚が自視点における公開情報になり――初期のデッキ枚数は28枚である以上、その段階でデッキ内の全てのカードの順番とライフに埋まっているカードが何なのかが把握できるようになります。
確定情報が増えにくい上にバーストがゲームの行方を左右しやすいディーヴァセレクションにおいて、この情報アドバンテージを捨てるのは非常にもったいないです。
そうでなくても1枚挿しの多いこのデッキでは各カードの位置把握はかなり大事。デッキの積み順は、絶対に覚えるようにしておきましょう。

「デッキを全把握してゲームプランを固定化する」という戦術はオールスターウムルの時代から10年近く擦り続けてきた戦術でもあり、最終的に微差ながらウムルを使用する方に天秤が傾いた理由でもあります。

  • 《中装 バックラー》《コードアンチ サルノテ//ディソナ》

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「メインデッキのディソナの枚数が少ないんだから、《コードアンチ サルノテ//ディソナ》より《凶天 ゲフィオン》の方がいいのでは?」「《コードアンチ サルノテ//ディソナ》を入れるなら、メタ効果も兼ね備えた《幻蟲 ミュウ//ディソナ》とかを積んだ方がいいのでは?」みたいな印象を持たれそうな枠なので解説を入れておきます。

ここの採用理由は、基本的にライフバーストの強さが理由です。

《羅星 ノヴァ//フェゾーネ》の項目で「デッキ順と埋まっているバーストを全把握して戦える」という話を書きましたが、埋まっているバーストをゲームプランに反映させるには「そのバーストが防御として機能するかどうか」が大事になってきます。
基本、黒ルリグと相対した相手は《小装 イペタム》《凶魔姫 エレシュキガル》を警戒してパワーの低いシグニから殴ってくることが多く、そういう相手に対して《幻蟲 ミュウ//ディソナ》《凶天 ゲフィオン》が埋まっていても防御として機能しません。「ライフ2枚のうち1枚がバーストだから、アシスト込みで後2ターンはある。それまでに詰め切れればいいから《極門天姫 ヨグニグラ》は無難にガード回収効果を選択しよう」みたいな筋道を立てるには、こういう不具合が少ない方がいいです。

生かせる特徴は最大限に生かそうという判断から、今回の構築ではバーストの除去範囲の広さを優先しました。

  • 《凶魔姫 アルフォウ//ディソナ》《幻竜姫 ドラゴンメイド》

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リフレッシュを追加打点のひとつとして使っていきたい以上、《凶将姫 ソウソウ》だけしか能動的にデッキを落とせないという形にすることはできません。それぞれコスパの良い除去として、《凶魔姫 アルフォウ//ディソナ》は活躍できる範囲の広さを、《幻竜姫 ドラゴンメイド》は最終ターンの爆発力の高さを見込んで1枚ずつ採用する運びとなりました。

《ウリス・アフリクト》で自分のデッキも削る今回の構築は、ラストターン付近ではリフレッシュ直前か、もうリフレッシュ済みであることが多いです。
リフレッシュ直前の場合、「《幻竜姫 ドラゴンメイド》は自分のデッキがリフレッシュしても火力が飛ばせる」ということを忘れないようにしましょう。打点の作りやすさがだいぶ変わってきます。

  • Lv2非バーストのシグニ達

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いろいろと振り分けてみたLv2の打点枠ですが、個人的には調整不足が出たなぁと思ってる枠のひとつで、今使うならここは弄った方がよさそうだと思ってます。

一応の高コスパ火力として入れておいた《幻竜 カルカロ//ディソナ》ですが、《ウリス・アフリクト》《コードアンチ サルノテ//ディソナ》と自デッキも大きく削っていく今回の構築だとラストターンぐらいしか出す機会がなく、別にその時も《中装 デウス//メモリア》で割とどうにかなりそうだったため、ひとまず《幻竜 カルカロ//ディソナ》《中装 デウス//メモリア》にずらした方がよさそう。

《幻竜 ウリス//メモリア》は、「デッキを1枚ずらす」という役割が持てる火力として採用した枠。
後手でデッキ全把握をする際、《UNKNOWN MEMORY》で1面バニッシュ+2アドバンテージを選択するとどうしてもデッキを1枚だけ落としたいゲームが発生するため、そこをケアできるなら入れてもいいかなということで投入されました。

実際は「デッキ全把握は優秀な動きのひとつではあるが狙える時に狙えれば十分だし、パワー-2000なんて半端な火力を入れるなら普通に《中装 デウス//メモリア》で十分」感が否めなかったため、弱くはないけどそれほど優先というほどでもないかな……といったところです。

  • 《MC.LION-DIG》

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積むことになった理由や《羅星 ノヴァ//フェゾーネ》との噛み合いの話は散々したので、ここでは「デッキボトムに送る3枚のカードをどう決定するといいか」について。
僕は基本、先手の際は「引きたいカードを2枚目に置く」、後手の際は「先に引きたいカードは1枚目に、後に引きたいカードは3枚目に置く」みたいな基準で順序を決定してます。

例えば《羅星 ノヴァ//フェゾーネ》のところで説明したデッキ28枚1循環を考慮すると、

・特に何も起こらなければ、4ターン目には1枚目と2枚目のカードを引くことになる
《聖魔 プルソン》のバーストを道中でめくった場合、1枚目のカードは《扉の俯瞰者 ウムル=トレ》の出現時効果でトラッシュに送るカードになり2枚目と3枚目を引くことになる
《UNKNOWN MEMORY》で1面バニッシュ2アドバンテージを選択したのち3枚トラッシュ送りを発動した場合などでも2枚目と3枚目を引くことになる

といったように、戻したカードの1枚目はいろいろなパターンでトラッシュに行なってしまう一方、2枚目は相手からの干渉がない限りドローするカードとなります(興味がある方は手元にデッキを準備して試してみてください)。
後手だとこれが1枚ズレることから、先手だと偶数番目、後手だと奇数番目に引きたいカードを置こう! となるわけです。試してみても理屈がよく分からない方は、とりあえず「先手なら引きたいカードを偶数番目、後手なら奇数番目に置いて戻す」だけでも覚えておいてください。

人間は「意味なくぼんやりやったことは忘れがちだが、ちゃんと理由を付けてやったことは忘れにくい」ものです。こじつけでもいいので、カードをデッキ下に戻す時は「どうしてその順番で戻したか?」を意識するようにしてみましょう。

改造案

こちらもちょっとでも採用理由がありそうなカードを全部挙げていくと膨大な量になるため、特に話した方が良さそうな所のみかいつまんで書いておきます。

  • 《コードアンシエンツ ファラリス》

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今回、投入しなかったのを一番後悔しているのがこの1枚。

相手にデッキ回復手段がなければ大体の場合リフレッシュまで持ち込むことはできるため、《コードアンシエンツ ファラリス》は基本的にデッキ回復効果を持つ相手に対してピンポイントで点数を要求するカードです。

さらに詳しく言えば、現環境ではほぼほぼタウィルに対してリフレッシュを促すカード。
いくらなんでも先週のチーム戦でやっと構築が出たタウィルがトップシェアになるとは思っておらず、ウトゥルス軸が増えるにしても自然なメタゲームの流れならウムル軸の方が多いだろうと判断しここのガードを下げた結果、見事にタウィルと連戦するハメになってしまいました。

今後タウィルが本当にトップシェアのまま環境が進むのかは怪しいところですが、入れる入れないでタウィルに対して通せる打点量は間違いなく変わるので、枠があったら入れておいた方がよさそうだと思ってます。

  • 《凶魔姫 エレシュキガル》

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一方、この《凶魔姫 エレシュキガル》に関しては、「そもそもいつもは入れていたが夢限少女杯では入れていなかった1枚」です。基本的には打点の遅い防衛派などにちらつかせながらゲームを進めるためのカード。

今日日、黒が絡むデッキに《凶魔姫 エレシュキガル》が入っていないことはほぼほぼありません。そして、ウトゥルス軸のデッキが一定数いそうな兆候は結構な人数が察知していたと思われます。
夢限少女杯というフィールドは、ある程度対面の実力に信頼が置ける環境。「防衛派を使う人も、《凶魔姫 エレシュキガル》が投げられる可能性を見越して、返しに殴り切れる程度の打点を準備できるようにするだろう」という推測を立て、大会当日はこの枠を安定化のための枠にずらしました。
実際のところ夢限少女杯当日に投げたいタイミングは一度も訪れなかったので、少なくともあの日は入れなくてよかった枠だったかなあ。

環境に合わせて白・黒のシグニを適宜採用でき、1枚の投入でも繰り返し使えるのがウトゥルスの強み。環境の動き方次第でこのカード以外にも《幻水姫 シィラ》《大装 ダークエナジェ》など入れたいシグニはいろいろ出てくるはずなので、そこは使う人の判断でうまく変えていきましょう。

  • 《コードメイズ ユキ//メモリア》

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《聖魔 プルソン》が全体の効果を消せるんだから小粒な効果消しカードなんて不要! として入れなかったカード。
ですが、《聖魔 プルソン》では《コードハート リメンバ//メモリア》の課税に対して強く出にくかったり、盤面に1回出すとリムーブが必要になりがちだったりといろいろな所で小回りが効かないため、《羅星姫 ミュウ//メモリア》からの回収が効きつつ盤面に出す際もノイズになりにくいこのカードを1枚入れるのもアリかなと思うようになってきました。

4.まとめ

せっかく推しルリグを使う形になった以上勝てるものなら勝ちたかったのは確かですが、「大枠の推測は合っていつつ、ここまでタウィル軸の方のウトゥルスが増えることは読めていなかった」という環境読みのトチりによってデッキ内の配分を間違えた形なので、悔しい結果ではありつつ間違えが敗北に直結しているのは妥当といえば妥当だなあ、というのが今回の夢限少女杯の反省。

デッキ自体は今でも中々悪くない感触で、特にオールスターでもウムルを使ってる人なら手になじみやすい形になったかなと思っているので、興味のある方はぜひ一度試してみてください。

それでは、また機会があればよろしくお願いします。

タカラトミーモール