【第6話 後半】

CONNECT&収束

「タマ……私も一緒にアンノウンを鎮めるわ」

「うん!るうに、こんなことしなくてもだいじょうぶだって、安心してもらおう!」

タマとユキは向かい合い、手を合わせた。

アンノウンの願いに対抗するために、気持ちを込める。

るうのいる世界に帰るまで、自分達だけでちゃんと頑張ると――。

今困っている人たちを、みんな助けたいのだと――。

すべてが解決したあかつきには、自分がどこにいても、みんなで一緒に遊ぶのだと――。

「ユキ……!」

「タマ……!」

お互いの名前を呼ぶと、その瞬間、ふたりの体は光に包まれた。

光が消え……そこにはマユの姿があった。

「あれは、……!タマ……?」

タマとユキが姿を変えたことに驚く花代。

「これならきっと大丈夫だ」と、緑子が頷いた。

「「るう……」」

マユが真っ直ぐ前を見つめ、歩いてくる。

花代に続き、リル、メル、緑子もアンノウンのもとから離れ、その様子を見守る。

アンノウンは引き続き再構築を進行させてはいたが、自分の前に立つマユの姿に、一瞬目を奪われたようだった。

そしてマユはアンノウンを優しく抱きしめる。

『るう、ありがとう……大好きだよ』

『私達は大丈夫だから、安心して……』

一瞬、ハッとしたような表情になったアンノウンは、そのままマユのあたたかい心と深い願いに包まれ、目を閉じる。

そして淡い光を放ちながら、まるで本物のるう子のような屈託ない笑顔で微笑み、そのまま消えていった――。

「終わった……のかな……?」

リルが辺りを見渡すと、先ほどまでの歪みや不穏な空気は収まり、穏やかになっていっているようだった。どんよりしていた空も、晴れ間が見えている。

タマゴ博士がディソナの映像や波長を確認したところエリアの融合も元に戻っているとのことだ。

突然の終幕に、逆に戸惑っている人達が多そうではあるが、物々しい雰囲気だったディソナが消えたことは、確実に解決と言えた。

「はぁ~良かったー!」

緊張が解けたメルは、足の力が抜けてその場に座り込んでしまった。

「はは、なんだか長い1日だったね……」

緑子も思わず脱力し、壁に寄り掛かった。

「みんな!大丈夫!?」

「ピルルク!」

リメンバから解放されたピルルクが走ってやって来た。

「こっちは何とか……終わったよ」

リルが簡単にあらましを説明すると、まさかすべてが終わるまで足止めされてしまうとは不覚だとピルルクは嘆く。

「まぁ……十分に相手をしておいたし、満足してしばらくは放っておいてくれることを願うわ」

「……お疲れ様……」

「それにしても……」

タマゴ博士がマユに近づき、じろじろ見始めた。

「タマ、もしかして君はWIXOSSの始祖である『まゆ』の関係者?」

「え、えっとー……」

その圧に、思わず後ずさってしまうマユ。
そうだと言えばもう逃げられない、そんな気がする……。

「少し話を聞かせてもらえないかな!?ボクはWIXOSSの研究をしているから、その名前は聞いたことがあるんだけど何せ都市伝説級の存在であって……!」

興奮しながら早口でマユを追いかけるタマゴ博士を見て、一同は思わず苦笑いである。

逃げているうちにタマとユキの姿に戻り、いつの間にか3人でおいかけっこのようになっていた。

「少しでいいから、少しで!」

「お、追いかけて来ないで……!」

「タマ、わかんないよー!」

リゾート地のような晴れやかな島に、みんなの笑い声が響き渡った――。

ふと空を見上げたタマは、遠くにいるるう子に、心の中で呼びかけた。

「ちゃんと自分の力でるうのところに戻るから、るうは心配しないで待っててね……!」

もう自分の願いによってアンノウンのような存在が生まれたり、WIXOSS LANDを混乱させたりしないようにと。

いつか元の世界に帰れるようになるまで、それまではちゃんとこの世界で、仲間達と力を合わせて頑張れると心から思えたのだった。


――こうして2つの新エリアの融合事件は幕を閉じ、無事クエストも終了した。

後日、運営の窓口にはみこみこの姿があった。

「ちょっと……!だから、そのタマってDIVAはみこみこと契約をしたのよ!」

タマとユキがアンノウンを消して事態を解決させたとして、報酬が与えられる告知がされていたが、それは違うと詰め寄っているようだ。

「そのへんに映像とか残ってないの!?常にモニタリングしてたんじゃないの?それか……証拠があればいいのよね?なんなら本人を連れてくるわよ!」

啖呵を切るみこみこに、スタッフも対応に困っているようだ。

「えーと、契約と言いましても……それはどういった内容で……?」

「だからぁ!みこみこの元について、言うことを聞いて戦うっていう契約だってば!」

「報酬を受ける権限をみこみこさんに譲渡するという話は……」

「はぁっ!?そんなの契約をしたんだったら、暗黙の了解のうちでしょ!?」

何としてでも報酬が欲しいみこみこは、必死である。

「しかしそれは……」

「もう!埒が明かないわね……上司を呼びなさい、上司をー!!」

この後、結局みこみこが報酬を受け取ることができたのかは不明である――。

タカラトミーモール