WIXOSS DIVA MEETS ARTS

第三章

【SIDE ヒラナ】

「よく考えてから行動しなさい」
子供の頃から、何度言われたことか。
最近も、レイちゃんによく言われる。「何かをする前に、まず考えなさい」って。
あたしだってわかってる。そうした方が間違いは少ないだろうし、失敗してもカバーできるだろうし。
でも……それじゃつまんない。
何が起きるか分からないから楽しいのに。
くじ引きだって、引かなきゃ当たらないし、バトルだって、やらなきゃ絶対勝てない。
「やってたら勝てたかもしれない」なんて考えは、絶対したくない。
それなら、戦って負けた方がずっといい。
失敗してもいいから、まず「やってみたい」。
やってみなくちゃ、何も始まらないから。

『WIXOSS DIVA ON STAGE』
あたしの一言から始まった今回の大会も、きっかけは「やってみたい」って思ったから。
『ミーツアーツ』大会の最中に流れた、「WIXOSSは三人一組のディーヴァバトルを廃止して、1対1のソロバトルに移行する」という噂。結局は噂だったんだけど、その時のあたしたちはそれを信じちゃって。
あたしはどっちも好きだし、どっちも続けたかった。
どっちにもやりたい人がいるのに、どっちかに絞っちゃうのは絶対おかしい!
そう思ったから、あたしはWIXOSSランドの運営の人たちに訴えようと思った。
「三人も一人も、どっちもやりたい!」って。
そのために、あたしはまず『ミーツアーツ』で絶対優勝しようと思った。
「一対一で負けたから文句言ってるだけだろー」なんて言われたくなかったからね。
だから決勝でレイちゃんに勝って、優勝して、あたしは思ってたことを訴えた。
「三人も一人も、どっちも続けたい」ってこと。
そして、「どっちも出来る大会をやりたい」ってこと。
……正直言うと、宣言した直後の会場の沈黙で、一瞬「ヤバいこと言っちゃったかも」と思ったのは事実。
レイちゃんとアキノちゃんにも、「いつもみたいに怒られるかも……」と覚悟もした。
「無責任に何でもやっていいわけじゃないでしょ!」
「みんなに迷惑がかかることもあるんだから……」
二人のそんな声が聞こえてきそうな気がした。
でも、そんな心配は直後の大歓声であっという間にかき消された。
レイちゃんとアキノちゃんも笑顔で、怒ってなかった(呆れてたかもしれないけど)。
三人も一人も、どっちも同じWIXOSSだもん。みんな、WIXOSSが好きでここに集まってきたんだから、どっちもやれた方が楽しいに決まってる。
それに、当たり前だけど、一人じゃバトルは出来ないもんね。みんながあたしと同じ気持ちだったことが、とにかく嬉しかった。
あたしの意見に賛同してくれた、みんなの笑顔。あたしは一生忘れない。
あの笑顔に応えるためにも、この大会は絶対実現させなきゃ。
そして、絶対成功させないと。
そう思って、ここまで頑張ってきた。
どんな大会にするか、規模やルールをなんにも考えずに言っちゃったことで、またレイちゃんたちに迷惑かけちゃったけど……言った以上は最後までやりきる。
やると決めたら、責任を持ってやり遂げる。
それだけは絶対に守る。あたしは、そう決めていた。

そして、もう一つ、決めていたことがある。
『誰よりも、あたしが全力で楽しむこと!』
やりたくて始めたのに、楽しめないなんて、もったいないもん。
きっと開催中も色々と大変なことがあると思うけど、それも楽しめるようにしたい。
それが、この大会『WIXOSS DIVA ON STAGE』の、あたしの目標。

あっ!
あと一つ。大事なことを忘れてた!
「やってみたい」から始まったことが、もう一つある。
みんなで歌う、『WIXOSS DIVA ON STAGE』のテーマソングを作ること!
開催が決まった時、ふっと頭に浮かんだんだよね。あたしたち『No Limit』の三人と、みんなが一緒に歌う光景が。
あれを実現できたら、きっと最高の思い出になる。
だから、やってみたい!
あたしの無茶すぎる突然の思いつきだったけど、誰も反対しなかった。
嬉しいことに、みんなが進んで協力してくれた。
作曲はレイちゃんが。アレンジは『Card Jockey』が担当。
演奏は『うちゅうのはじまり』。振り付けは『DIAGRAM』が。
みこみこは「メインボーカルは『きゅるきゅる~ん☆』が!」とか言い出したけど、それはキッパリはっきりお断りして、コーラスで参加してもらうことに。
『デウス・エクス・マキナ』は、収録や練習のスタジオを手配してくれた。
そして――作詞は、あたし。ヒラナが担当。あたし一人じゃ大変だから(不安だから?)って、アキノちゃんも協力してくれることに。
思いがけず、『みんなで歌う歌』は、『みんなで作る歌』になった。
歌うのは、『WIXOSS DIVA ON STAGE』最終日のメインステージ。
その日までに、絶対にこの歌を完成させないと!

こうしてあたしたちの、最高に忙しくて、最高に素敵な大会は始まった。


『WIXOSS DIVA ON STAGE』のルールは、みんなで意見を出し合って、極力シンプルにした。
参加資格は「WIXOSSが好き」ってこと。
三人一組のディーヴァバトルでも、アーツを使った一対一のバトルでもいいから、参加エントリーしたら、一回は必ずバトルをすること。
何回負けても、一つでも勝ったらご褒美ライブのステージに立てる。
バトルはフリー対戦。好きな相手に挑戦できて、挑戦された側は好きな相手を選べる。
そして、最終的に勝利数の多かった2人が対戦して、勝った方が優勝。
「シンプルすぎじゃない? これじゃーみこみこたち『きゅるきゅる~ん☆』は毎日ライブ確定じゃーん♪」

みこみこは文句なのか感謝なのか分からないこと言ってたけど、あたしたちとしてはとにかく参加とライブのハードルを下げて、一人でも多くのディーヴァに楽しんでもらえるように考えたつもり。

結果として、この方針は大成功だった。
大会の概要とルールを発表した直後から、参加エントリーが殺到! 開始当日の時点で最多参加者数の新記録だった。
でも、同時にこの人数のバトルやライブのスケジュールを管理しなきゃならないので、あたしたちにとってはまさに「嬉しい悲鳴」。
こういう時、一番頼りになるのは、やっぱりタマちゃんたち『うちゅうのはじまり』の三人だった。あたしの方から協力をお願いする前に、バトルとライブの会場のスケジュール管理用のシステムを組んでたみたいで、喜んで引き受けてくれた。
「参加者にイベントを楽しんでもらう上で最も重要なのは、ストレスを感じさせない運営さ。ここはボクたちに任せておきたまえ」
「淀みないシステム……これこそ、調律された美しき清浄の世界」
「このデータがあれば、更なる大規模イベントの運営も可能ですね、博士」

タマちゃんたちのおかげで、みんながストレスなく参加できて、大会は初日から大盛況だった。
知名度の高い『デウス・エクス・マキナ』には連日挑戦状が殺到していたし、『Card Jockey』や『DIAGRAM』のライブは毎日大盛り上がり。他のディーヴァたちも、それぞれに大会を楽しんでるみたい。

でも、やっぱり今回の一番の目玉は、なんといっても『夢限少女』の参戦!
アキノちゃんのナイスすぎる提案で実現した最高のサプライズに、WIXOSSランド中が大騒ぎになった。
『夢限少女』のメンバーで、今はプロデューサーのミカさんは、アキノちゃんとのバトルに負けて渋々だけど了承してくれた。
普段はWIXOSSランドでバトルの解説をやってるリエさんは、何も知らされてなかったのでビックリしてたけど、大会の趣旨とミカさんの参戦までの流れを話したら大笑いして参加表明した。
「『夢限少女』の作戦参謀だったミカが出し抜かれるなんて。年取っちゃったね~」
「う、うるさいわねっ! あなたと大して変わらないでしょ!」
そして、あと一人。アザエラさんが揃えば『夢限少女』は完全復活。
でもでも……ミカさんたちも連絡が取れないらしく、夢限少女は二人だけの参戦になった。残念。
だけど、二人とはいえ、やっぱり伝説のディーヴァはすごかった!
参戦が決まった直後から、二人への対戦希望者が殺到。チャンスを公平にするために、対戦者は毎日抽選で選ぶことにしたんだけど、その倍率は数千分の一とか、数万分の一とか言われて。
更に、二人のバトルの観戦希望者もすごい数になって、一番大きなスタジアムでもチケットは秒殺だったし、バトルの生配信の閲覧者数はWIXOSSランド始まって以来の新記録になった。
そして、もちろんバトルの内容もすごかった。『夢限少女』がトップディーヴァだった頃はアーツはなかったから、二人ともソロのバトルは経験してなかったはずなのに、現役バリバリみたいにアーツを使いこなして連戦連勝。

改めて、『夢限少女』の人気と実力に驚かされちゃった。
でも、だからこそ、あたしも対戦したかった。
ずっとずっと憧れてきた『夢限少女』が復活したんだもん。しかも、以前と変わらない人気と強さで、戻ってきてくれた。あたしが一番好きなアザエラさんはいないけど、それでもあたしは、絶対バトルしたい!
この願いは、絶対叶えたい!
そう思ってたんだけど……。
さっきも言ったように、ミカさんたちとのバトルは抽選で決まる。抽選のシステムを開発・運用してるのはタマちゃんたちだから、お願いしたら多分なんとかしてくれたかもしれないけど……そういうことはしたくなかった。
二人とバトルしたい気持ちは、みんなが持ってる。あたしだけじゃないから。ズルはしたくないもん。

それに――対戦希望者が殺到してたのは、夢限少女の二人だけじゃなかった。
『WIXOSS DIVA ON STAGE』を最初に言い出した、あたしたち『No Limit』とバトルしたいって人も、実は相当たくさん集まっていた。
「この大会が始まって、今やこのWIXOSSランドはキミたち三人を中心に動いていると言っても過言じゃない。注目が集まるのは当然の結果さ」
タマちゃんは冷静にそんなことを言った。恥ずかしいような、嬉しいような……。
結局、あたしたちとのバトルも抽選で決めることになったので、対戦相手を自由に選ぶことが出来なくなってしまった。
すると、みこみこや『DIAGRAM』のムッちゃん(ムジカちゃん)が抗議に来た。
「今度こそ、あんたを公衆の面前でズタボロに負かしてやるはずだったのに!」
「私との再戦が実現するまで、負けることは許しませんわよ! ヒラガナさん!」

あたしだって、二人ともバトルしたかったよ。
二人だけじゃない。『デウス・エクス・マキナ』のエクスとも、『ミーツアーツ』大会の頃から対戦の約束をしてたから。それが叶いそうもなくて、彼女も残念そうだった。
でも、エクスにはもう一つ、目標があった。多分それは彼女にとって、あたしとのバトルよりも大切な目標。
「この悔しさは、ミカPとのバトルにぶつけるよ」
「ええっ! 抽選当たったの!?」
「ああ。私たち『デウス・エクス・マキナ』の生みの親で、育ての親のミカPと、大舞台で対戦できるんだ。絶対勝つよ!」

子供みたいに目を輝かせてるエクスを見て、あたしは心底羨ましかった。
するとエクスは、そんなあたしの手を握った。
「ありがとう。私の願い、叶えてくれて」
「エクスの、願い?」
「ああ。ずっと追い続けてきた、ミカPたち『夢限少女』との本気のバトル。ヒラナたちのおかげで、叶ったよ」
お礼なんて言われると照れくさいけど……最高に嬉しそうなエクスを見て、あたしも嬉しくなった。
自分たちで始めた大会が、誰かの願いが叶う場所になったこと。それがこんなにも嬉しいなんて。
(やってよかったなぁ、『WIXOSS DIVA ON STAGE』)
あたしは心からそう思った。

エクスとミカさん、二人のバトルはミカさんが勝った。
でも、バトルが終わった後は二人とも晴れやかな顔だった。
きっと二人には、勝ち負けよりも大事なモノがあったんだなぁ。
そんなバトルが出来る二人を羨ましく思っていたんだけど……その時、あたしは閃いた。
「そうだ! その手があった!」
「な、何!? どうしたのヒラナちゃん!?」
「また変なことを思いついたんじゃないでしょうね?」
「ち、違うよ! 変なことじゃない! 今回は最っ高にいいこと!」
一緒に観戦してたアキノちゃんとレイちゃんは一瞬すごーくイヤ~な顔したけど、あたしが説明すると、すぐに賛同してくれた。
「確かに、その手があったわね!」
「大変だと思うけど、私もやってみたい!」
「よーし! やろうよ! 三人で頑張れば、絶対できる!」

あたしたち三人は、新たな目標に向けて動き出した。
三人共通の、一つの願いを叶えるために。


『WIXOSS DIVA ON STAGE』は大きなトラブルもなく、順調に進行していった。
あたしたち『No Limit』は、大会運営の協力をしつつ、毎日バトルの連続で大忙しだったけど、楽しい日々を過ごしていた。
そんな中で、まったく順調じゃない問題が一つ残されていた。
あたしが提案した、「みんなで歌う歌」の制作。
正確に言えば……問題は、あたしの作詞だけなんだけど。
誰もが忙しい中で協力してくれてるのに、あたしが担当する作詞だけが全然進んでなかった。
最初は「急がなくてもいいから」と笑顔で言ってくれたレイちゃんの表情が、ここ数日は明らかに険しくなっている。そろそろ爆発しそうな感じがビリビリ伝わってくる。
アキノちゃんは歌のテーマや方向性について色々とアイデアを出してくれたけど、それを詞にまとめる能力があたしには足りないみたいで……。
「私が叩き台を考えるから、それを下敷きにして作詞してみたらどうかな?」
アキノちゃんがそんな提案をしてくれたけど、それじゃあほとんどアキノちゃんに丸投げみたいで、あまりにも無責任な感じがした。
だから、なんとか自分の力でやってみようと頑張ってるんだけど……あたしの空っぽの頭はカラカラ空回りするだけだった。

「う~ん……『めくれカード』『放てアーツ』……って、これじゃ熱血アニメだよ~!」
あたしは恥ずかしくなって、思いついた言葉を書いたノートを破り捨てた。
――次のバトルまでの待ち時間。あたしは昭乃ちゃんのバイト先、カードショップ『Heaven’s door』で作詞を進めようとしていた。
でも……全然進まなくて、ずっと頭を抱えてウンウン言ってた。
そんな時。このお店の店長さんが来て、あたしの前に暖かいカフェオレを差し出した。
「平和ちゃんらしくない顔してるわね。これでも飲んで、少し落ち着いて」
店長さんは、二十歳過ぎたぐらいの、美人お姉さん。WIXOSSにも詳しくて、いつも色々と相談に乗ってもらってる。
「あたしらしくない顔って、どんな顔だろ……?」
スマホに自分の顔を映して見てみる。うん、いつも通り、そこそこ可愛い。気がする。
「すごく難しそうな顔してたわよ。あんな顔、バトル中でもしないんじゃない?」
店長さんの言うとおりだ。バトルでピンチの時って、ウンウン唸って考えたところで、やれることは限られてるし。だったらサッと決めて即行動。それがいつものあたし。
ってことは、今のあたしは相当困って、悩んでるってことなんだよね……。
店長さんは、あたしが破り捨てたノートを拾い上げて、書きかけの詞を見始めた。
「あーっ! ダメダメダメ! 見ないでーっ!」
あたしは慌てて止めたけど、遅かった。全部見られた。ううっ、恥ずかしすぎる……。
笑われる――そう思って、店長さんの顔色を伺うと、店長さんも珍しく、難しそうな顔をしていた。
「……これも、平和ちゃんらしくないわね。かっこいいことや、綺麗な言葉を考えすぎなんじゃないかしら」
「え……」
言われてみて気がついた。確かに、「みんなで歌う歌」だから、恥ずかしくない歌詞にしたいって思って、なんとなく「かっこいい詞」「綺麗な詞」にしようって考えてた気がする。
でも……よくよく考えたら、現国の成績が学年最下位ばく進中のあたしにそんな立派な言葉、簡単に浮かぶはずがないよね。
「みんなが平和ちゃんに作詞を任せたのは、『綺麗な言葉』に期待したわけじゃないと思うの。『No Limit』としてここまで来て、『WIXOSS DIVA ON STAGE』を始めたヒラナちゃんの、素直な言葉が聞きたいんじゃないかしら」
「あたしの、素直な言葉……?」
「ええ。難しい言葉じゃない、平和ちゃんの気持ちが伝わる、素直な言葉」
そう言って、店長さんはいつもの笑顔を見せた。
店長さんの言葉で、あたしはふっと気持ちが楽になった気がした。
色々と難しく考えるんじゃなく、素直に、ストレートに、あたしの気持ちを書けばいいんだ。
あたしは店長さん差し入れのカフェオレを一気に飲み干すと、真っ新なノートに思いつくままに書き始めた。
夢限少女を見て、WIXOSSを始めて、『No Limit』になって、ここまで来た日々を思い出しながら。
まとめるのは後でいい。今はとにかく、思った事を全部書いてみる。
それがきっと、「あたしらしい」詞になるはずだから。


やっと作詞に希望が見えてきた、そんな時。
誰もがビックリするようなことが起きた。
『夢限少女』の最後の一人、アザエラさんが突然、『WIXOSS DIVA ON STAGE』への参戦を表明した。

消息不明で事実上引退と言われてたアザエラさんが、WIXOSSランドに帰ってくるという情報に、全てのディーヴァが騒然となった。
もちろん、あたしたちも。
「これは、いよいよ負けられなくなったわね……」
レイちゃんは早くも気合い十分って顔。

あたしたち『No Limit』、三人共通の一つの願い。それは、『WIXOSS DIVA ON STAGE』で勝ちを重ねて、優勝決定戦で夢限少女と対戦すること。

対戦相手が抽選で選ばれる両チームが直接バトルをするためには、抽選で当たるか、勝ち数でトップ2になって優勝決定戦に進むしかない。
両チームとも対戦希望者がダントツで多いので、バトルの数も当然多くなる。だから、勝ちを積み重ねればトップ2に入ることは可能だ。
もちろん、そう簡単に勝てる相手ばかりじゃない。だけど、『夢限少女』とバトルするには、これしか思いつかなかった。
勝ち続ければ、『夢限少女』とバトル出来る。そう信じて、あたしたちはここまで戦ってきた。
でもまさか、アザエラさんが復帰して、『夢限少女』が三人揃うなんて。さすがにそこまでは考えてなかった。嬉しすぎるサプライズに、あたしもやる気がフルチャージ!
「絶対叶えよう! あたしたちの願い! 残りのバトル、全部勝つよ!」
あたしたちは勝ち続けた。勝って勝って、勝ちまくった。
抽選で当たってバトルした『きゅるきゅる~ん☆』にも勝った。
「なによもー! 気合い入りすぎでしょ! みこみこ、つまんなーい!」
みこみこは負けた後にブーブー言ってたけど、気合いが入って当然だよ。だって、ずっと憧れてきた人たちとのバトルが、目の前まで来てるんだもん。
この願いは、絶対叶えたい。そのために、ここまで戦ってきたんだから。

そして――遂にその日がやってきた。
『WIXOSS DIVA ON STAGE』最終日。
優勝決定戦に進んだのは、『夢限少女』と、『No Limit』。
スタジアムは、もちろん超満員。生配信の視聴者数は過去最高だとか。
でも、観客の大歓声も、あたしの耳には届いてなかった。
目の前に、夢限少女がいる。

あたしがWIXOSSを始めるきっかけで、ずっとずっと憧れてきた。そんな人たちを前にして、あたしは震えが止まらなかった。
こんな気持ちじゃバトルにならないかも……急に不安になって、あたしは助けを求めるように隣のレイちゃんとアキノちゃんを見た。
そうしたら、二人も震えてた。こわばった顔で。レイちゃんのこんな姿、初めて見た。
それを見て、あたしは逆にちょっと落ち着いた。
(あたしだけじゃないんだ……みんな同じ気持ちなんだね)
そう思ったあたしは、二人の手をギュッと握った。
二人とも、一瞬ビックリしてたけど、すぐにギュッと握り返してきた。
あたしたち三人、ようやく震えが止まった。
三人でここまで来たんだ。これからも、三人一緒。
あたしは、向かい合う夢限少女の三人を見た。
「ずっと、『夢限少女』に憧れてました……いつかバトルしたいって、ずっと願ってました! それが今日、叶いました!」
そんなあたしを見ていたミカさんが、口を開いた。
「願いが叶ったなら、これでもう満足かしら?」
ちょっといじわるな笑顔。あたしは、すぐに応えた。
「全然! また新しい願いができたから。あたしたち三人で、『夢限少女』に勝ちたい! この願いも、叶えてみせます!」
あたしの言葉で、お客さんたちが大歓声を上げた。
ミカさんはムッとしてたけど、リエさんとアザエラさんは笑ってた。
「あーあーミカってば、また一本取られちゃったわね~♪」
「っ! バトルでは容赦しないから!」
睨んでくるミカさんを見て、あたしは大事なことを思い出した。
「あっ、あのっ! 一つお願いがあるんですが!」
「な、何よ!?」
ミカさんは『WIXOSS DIVA ON STAGE』のサポートを懸けてアキノちゃんとバトルした時のことを思い出したのか、一瞬嫌そうな顔をした。
さすがは夢限少女。勘が鋭い!
「あたしたち、みんなで『WIXOSS DIVA ON STAGE』のテーマソングを作りました! みんなで歌える、みんなの歌を! だから、あたしたちが勝ったら、『夢限少女』にも一緒に歌って欲しいんです!」
そうお願いして、あたしは夢限少女の三人に向けて音楽ファイルを送信した。
あたしが書いた歌詞も添えて。
「あなたたちは毎度毎度どーしてこうも面倒なことばかり思いつくのかしら! 何かを提案する前にまず相談をしなさいよ!」
「まあまあ落ち着いて」
怒るミカさんをリエさんが宥めてる中、アザエラさんはあたしが送った歌詞をジッと見つめていた。
ちょっと険しい、真剣な顔。あたしはドキドキしながら反応を待っていた。
――しばらくして、アザエラさんはあたしの方を見た。
「……これが、あなたの歩いてきた道。そして、これから進む未来なのね」
「え……は、はいっ!」
ビックリした。あたしが歌詞に込めた思いを、完全に見抜かれてたから。
すると、アザエラさんはフッと微笑んだ。
「素敵な歌詞ね。あなたたちが勝ったら、喜んで歌わせてもらうわ」
どこか店長さんに似た、優しい笑顔で応えた。
『夢限少女』が、一緒に歌う約束をしてくれた。でも、それだけで満足してる場合じゃない。バトルで勝たないと意味がない。
絶対勝つ。勝って、みんなで一緒に歌う。そう決意して、あたしたちは改めて夢限少女と向かい合った。
「オープン!」
ずっと願ってきたバトル。そして、新たな願いを叶えるためのバトルが始まった!


『WIXOSS DIVA ON STAGE』最終日の閉会式。
メインステージには、この大会を提案したあたしたち『No Limit』と、協力してくれた『うちゅうのはじまり』『Card Jockey』『DIAGRAM』『きゅるきゅる~ん☆』『デウス・エクス・マキナ』。
そして、『夢限少女』の姿があった。
すごいメンバーが並ぶ中、あたしはマイクの前に立った。
「この大会を言い出したのはヒラナなんだから、閉会の挨拶はあなたがするべきよ」
レイちゃんの言葉に、抵抗したのはあたしだけだった……アキノちゃんも、他のみんなも、レイちゃんの意見に賛成した。
ううっ、こんなの絶対あたしのキャラじゃない……最後までそう思ってたけど、最終的には覚悟を決めた。
「『WIXOSS DIVA ON STAGE』は、『誰でも参加できる大会をやりたい』という、あたしの願いから始まりました! それが叶ったら、次に『夢限少女』とバトルしたいという願いも叶って! ホント、夢みたいです!」
ここに来るまでの、長いような、短いような日々のことが不意に蘇ってきて、あたしは泣きそうになった。
でも、涙をグッと堪えて言葉を続けた。
「だけど、これで終わりじゃない! 新しい願いを叶えるために、あたしたちは走り続けます! ここはWIXOSSランド! みんなの願いが交差する場所だから!」
超満員のお客さんたちから、大歓声が沸き起こった。
気がつくと、あたしの両隣にはレイちゃんとアキノちゃんが来ていた。
泣いてるアキノちゃんと、笑顔のレイちゃん。二人の最高の仲間と手を握って、あたしは叫んだ。
「諦めなければ、願いは叶う! だからこれからも、みんなで願いを叶えよう! 行くよ、てっぺんまで!」

そして流れ出す、新たなメロディ。
生まれたばかりの、みんなの歌が響き渡る。
みんなの想いと、願いを乗せて、どこまでも――。
「せーの、ウィッシュ・イン!」

第三章・完 つづく

タカラトミーモール