なぜベイブレードは世界を熱狂させる?入りやすいのに、どこまでも奥深いGEAR SPORTSの世界
「子どもの頃に夢中で遊んだ懐かしいおもちゃ」
ベイブレードと聞いて、そんな印象を思い浮かべる人も多いかもしれない。
しかし、現在のベイブレードは年齢・性別・言語を飛び越え、世界中で熱狂を生み出す「GEAR SPORTS」へと進化を遂げている。
1999年の誕生から27年を迎えた今、なぜベイブレードは「おもちゃ」の枠を超え、世界中を熱狂させているのだろうか。その熱狂の舞台裏やベイブレードに込められた想い、今後の展望について、ベイブレード開発チームの髙坂さんに話を聞いた。

世界中でBEYBLADE Xの熱狂を生み出す仕掛け人
ベイブレード開発チームの髙坂さん
2020年2月にタカラトミーへ中途入社。『トランスフォーマー』『ダイアクロン』『キャップ革命 ボトルマン』『ベイブレードバースト』のマーケティングを経て、現在は『BEYBLADE X』の国内およびアジアエリアのマーケティングを担当。初めてベイブレードに触れる方から、長く楽しんでいるファンまで、幅広い人にその魅力を届けるため、イベントの企画やベイブレード公式YouTubeチャンネル「ベイチューブ」への出演など、幅広い取り組みに携わっている。
言語も年齢も超えた真剣勝負が今ここに。世界を熱狂の渦に巻き込む「BEYBLADE X」

シリーズ初となる世界大会「BEYBLADE X WORLD CHAMPIONSHIP 2025」では、予選を勝ち抜いた選手たちが世界21地域から集結。想像以上の緊張感が漂う中、選手たちが真剣な表情で頂点を狙って競い合っていた。
その光景は、かつての記憶にある「子どものおもちゃ:ベイブレード」の枠を超えた、「GEAR SPORTS(ギアスポーツ)」そのものだった。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
予選の様子なども見ていましたが、実際に世界中から選手やご家族が集まる場に立ち会うと、皆さんが本当にベイブレードに真剣に向き合ってくれているんだなと感じました。
自分たちが届けているベイブレードという存在が、これほど世界に広がり、多くの人に愛されているのだと肌で体感でき、純粋に嬉しかったですし大きな励みになりましたね。
1999年に誕生した初代や第2世代の時代は、小学生の男の子を中心に遊ばれるおもちゃという側面が強かった。しかし、第3世代『ベイブレードバースト』、そして現在の『BEYBLADE X』へと進化する中で、その様相は大きく変わり始めている。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
『BEYBLADE X』を立ち上げる際、ベイブレードが年齢・性別・言語を超えて多くの方が楽しめるものになっている、そしてプレイする方だけではなく、見ている方も楽しんでいるものになってきていると感じていました。
おもちゃの域を超えたスポーツと表現することで、子どもから大人までたくさんの方が始めるきっかけになるのではないか、そして最終的には日本生まれの世界に誇るカルチャーにできるのではないかというところで、「GEAR SPORTS」という言葉を掲げて、リブランディングをしました。
結果的に国内では前作ベイブレードバースト以上にたくさんの方が初年度から楽しんでくださりました。
また日本以外の各地域でも世界大会や各地域のイベントに参加をし、直に世界中の多くの方が楽しんでくださっていっている実感を得ることができました。
ただし、これは「大人向け」へ舵を切ったということではない。
子どもを中心に据えながら、あらゆるプレイヤーがフラットに参加できるよう接点を広げていく。その狙いが見事にはまった結果として、親子での参加や大人の本格派プレイヤーなど、現在の熱い広がりへと繋がっているのだ。
言葉はいらない。「3・2・1 GO SHOOT!!」で繋がるノンバーバルなコミュニケーションツール

世界大会の会場で印象的だったのは、言語の違いを感じさせないプレイヤーたちの姿だったという。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
ベイブレードは、言葉を交わさなくても一緒に楽しめる、ノンバーバルなコミュニケーションツールだと思っていますが、世界大会でそれがまさに体感できたなというのがすごく印象に残っています。
バトルも『3・2・1 GO SHOOT!!』の掛け声さえあれば、あの場で初めて顔を合わせた方同士でも、ベイブレードを通してコミュニケーションが取れる。
試合自体はもちろん真剣勝負なのですが、終わった後はお互いに握手をしたり、グータッチをしたり、時にはハグをしたり。ベイブレードは、性別や年齢、言語の壁を超えて人と人をつなぐことができるコンテンツなのだと改めて確信し、その可能性を感じました。
さらに興味深いのは、ベイブレードは「一度勝ったから勝ち続けられる」わけではない点だ。
勝敗のバランスについてこう明かす。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
ベイブレードって、カスタマイズが3分の1、シュートなどのテクニックが3分の1、そして残りの3分の1が『運』というバランスになるように狙って作っているので、世界大会で上位になったような実力者の方が、その後の大会でお子さんに負けてしまうようなこともありますし、逆に、大会に初めて出た方がいきなり1位になったり、お子さんの付き添いで参加された保護者の方がそのまま勝っちゃうケースもあるんですよ(笑)。
もちろん、パーツの知識やスキルを磨けば、勝ちを引き寄せる確率を上げることはできる。
しかし、「運」という不確定要素を絶対にゼロにはできない。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
パーツの種類や特徴などの知識やスキルがあると「運」で負けてしまう可能性を減らせるかもしれませんが、ゼロにすることはできません。
初心者でも気軽に始められるのに奥が深いところが、ベイブレードがこれだけ熱狂される理由の一つかなと思います。
なぜ人はベイブレードにハマるのか?「本能」と「構造」が作り出す熱狂のメカニズム

現代のベイブレードが生み出す熱狂は、決して偶発的なものではない。
その原点にあるのは、意外なほどシンプルな人間の「本能」だという。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
ベイブレードがなぜここまで多くの方に受け入れられているのかというところでいうと、ベイブレードのアソビは、『人の本能に根ざした遊び』であるというところにあるかなと思っています。
相手に勝ちたいという『闘争本能』や、パーツを集めて自分好みにしたいという『収集本能』、勝つために試行錯誤するみたいなところも、結局人間の本能や欲求に根ざした遊びになっているところが、広くずっと受け入れられている理由だなとは思うので、その本質的なところはぶらさずに、よりその魅力をたくさんの人に届けるにはどうしたらいいかを考えています。
本能を揺さぶる魅力があるからこそ、世代を問わず直感的に引き込まれ、誰でも気兼ねなく参加できる。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
たとえばベイブレードの構造だったら、よりぶつかり合いを激しくするために、ベイブレード同士が当たる部分を金属製にしたり、バトルをより派手にするために、相手を破壊するバーストフィニッシュが追加されたり、『BEYBLADE X』では、さらにバトルを激しくするためにベイブレードが超加速する「X(エクストリーム)ダッシュ」を搭載したりと、進化し続けています。
しかし、ただそれだけではここまでの熱狂には至らない。
本能を刺激する直感的な面白さは昔から変わらない。だが、大人が改めて触れると、そこにはまた違った景色が見えてくる。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
子どもの頃はなんとなく遊んでいた人が大半だと思うんです。
でも、大人になってから改めて触ってみると、『今のベイブレードはこんなに進化してるんだ』『実はこんなに奥が深かったんだ』とカスタマイズや試行錯誤の面白さに気づいてくださっているのかなと思っています。
初心者が始めやすい一方で、一歩足を踏み入れると一気に夢中になれる。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
パーツの組み合わせパターンは、数千万通りを超えて存在します。
今はYouTubeでさまざまなカスタマイズを紹介していたり、アプリのカタログ機能で自分のコレクションを管理できたりと、改造欲求や収集欲求をくすぐる環境も進化しています。
簡単に始められて、奥が深いというのもベイブレードの魅力だと思います。
そして、この「本能に刺さる」「入りやすい」「奥が深い」という構造が、さらに周囲へと熱狂を広げているのが「人と一緒に遊ぶ」という大前提の仕組みだ。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
ベイブレードは一人でも回せますが、「ベイバトル」を楽しむためには相手が必要です。
勝った喜びや負けた悔しさをその場で人と共有するからこそ、熱量が冷めず、周囲に広がりやすい。
一人ひとりの熱が大きくなり、バトルを通じてその熱が周囲へと伝播していく。
この構造があるからこそ、日本だけでなく世界中で大きな熱狂が生まれているのだと感じています。
カラオケ貸出からゼクシィコラボまで。「触ってなんぼ」で広げる接点

大人から初心者まで巻き込むために、注力しているのが「気軽な接点づくり」だ。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
ベイブレードって、やっぱり『触ってなんぼ』なところがあるんです。
やってみたら面白いっていう自信があるので、イベントだけではなく、いろんなところで触れてもらえる場所を増やすことはすごく意識しています。
ベイブレードの魅力を知ってもらう最大の近道は、実際に触って遊んでもらうことにある。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
だからこそ、体験できる場所を従来のおもちゃ売り場以外にも、カラオケのコート・ダジュールさんや、シェアリングスペースの快活CLUBさん、地域のお祭りなど、本当にいろんな接点を増やす取り組みをしています。
葛飾区のお祭りやフードフェスタへの出展、ショッピングモールでのイベントツアーにとどまらず、カラオケ店やシェアリングスペース、さらには下北沢に常設された「BEYBLADE BAR TOKYO」など、気軽に遊べる環境を増やしている。

さらにユニークなのが、ブライダル情報誌『ゼクシィ』とのコラボレーションによる、2人1組のタッグ大会「ゼクシィカップ」だ。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
イベントをやっていると、女性やカップルの参加が増えているなという印象がありました。
ベイブレードはコミュニケーションツールなので、親子や友達はもちろん、コミュニケーションの相手としてカップルやふうふがいてもいいんじゃないか?と考えてゼクシィさんに連絡しました。
恵比寿ガーデンプレイスで開催されたイベントでは、性格診断フローチャートで「お互いの性格に合ったベイブレード」を選び、ペアで協力してスタッフの強力なベイブレードに挑む企画を実施。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
2人で参加するタッグ大会だけでなく、スタッフのベイブレードに対して、協力して勝ちに行くといったイベントをやったり、すごく盛り上がりましたね。
最強を作らず、最強を探し出す。ファンを夢中にさせ続ける商品開発の舞台裏

ファンを飽きさせず、常に熱狂させ続けるために、商品開発では徹底したこだわりとルールが存在する。
その一つが「新しいベイブレードやパーツを登場させ続ける」ことだ。
単に飽きさせないためだけではない。目的は、競技環境そのものを動かし、常に「正解を書き換え続ける」ことにある。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
ベイブレードのコンセプトは『最強を探し出す』ことです。
新しい商品が出て環境が変わっていかないと、勝ちパターンが固定化してしまうので、新しいベイブレードやパーツを登場させ続けることで、環境の変化を起こせるようにしています。
商品開発にあたって、髙坂さんたちが最も意識しているのが「このベイブレードを一言で言うと何なのか?」を作ること。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
『分身します』『重い連打攻撃ができます』『一撃必殺攻撃ができます』みたいに、それぞれちゃんと一言で言えるコンセプトを作る。
その上で『じゃあモチーフはこれがいいんじゃないか』『アニメや漫画ではこういう風に機能を表現しよう』と意識しながら作っています。
また、開発において絶対にやらないと決めているのが「絶対的な最強を作ること」だという。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
それを作ったら終わりなんですよ。
直球の言葉で切り出した。どういうことだろうか。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
最強のベイブレードを作ってしまうとユーザーの皆さんが試行錯誤して楽しみ続ける余地がなくなってしまう。
だからこそ『最強を生まない』ことを徹底しています。
ここで活きているのが、ベイブレード誕生時から組み込まれている構造だ。
ベーゴマという伝承玩具に、トレーディングカードのようなカスタマイズやデッキ構築の要素が持ち込まれている。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
『このベイブレードには強いけれど、このベイブレードには弱い』みたいなのをすごく考えながら作っています。
カードゲームでデッキを組むように『この軸先よりも、こっちの軸先にしよう』ってカスタマイズしていくみたいな、トレードオフの関係(相反する関係)をパーツごとに作り出しています。
「最強を作らない」という考え方は、商品単体だけにとどまらない。大会では、採用されるルールやスタジアムによって使用するベイブレードも変わる。
さらに開発側では、これから登場する商品まで見据えながら、特定の組み合わせだけが「正解」として固定されない環境を考えているという。
新しいベイブレードを作ることは、競技環境そのものを作り続けることでもあるのだ。
もちろん、回転する金属が激しくぶつかり合う玩具である以上、「安全性」の担保は絶対条件となる。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
大前提として『安全性』は一番意識しています。
新しいベイブレードを作るたびに過去の商品との組み合わせも作って、実際に人が手作業で何度もシュートして安全かどうかを確かめています。
狙ったコンセプトが体現できているか、最強になっていないか、そして安全が確保されているか。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
過去のパーツと組み合わさったときにめちゃめちゃ強いものになっていないか、安全がしっかり担保できているか。
地道にシュートを重ねてその検証を一個ずつ丁寧にやっていくことで、皆さんが安心して試行錯誤を楽しめる土台を作っています。
目指すは日本が世界に誇る「カルチャー」。「回す力」が起こす更なる熱狂の渦

単なる子どものおもちゃの枠を超え、GEAR SPORTSとして世界へ広がり続けるベイブレード。開発チームがその先に見据えている未来は、さらに大きなスケールだ。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
私たちが最終的に目指しているのは、ベイブレードを『カルチャー』にすることです。
カルチャーとは、人々の日常に当たり前に存在している状態と自分は考えています。
日本から生まれたベイブレードを、誰もが知っていて当たり前に遊んでいる世界を目指していきたいと考えています。
カルチャー化に向けたアプローチとして、温泉地やカラオケ、日本発のキャラクターとのコラボなど、日本文化と掛け合わせた施策を次々と展開している。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
個人的には、僕、盆踊りを作りたいんですよ!
一見、突飛にも思える「盆踊り」だが、その先に描いている風景は具体的だ。
ベイブレード開発チーム 髙坂さん
盆踊りやお祭りって、日本生まれで世界に誇れる文化だと思っているんです。
実際、日本だけでなく海外でも盆踊りのイベントが行われるなど、日本から世界へ広がっていますよね。
お祭りには射的や輪投げのコーナーがあると思うんですけど、その隣に当たり前のようにベイブレードがあって、浴衣を着た子どもや大人、海外から来た方々も一緒に遊んでいる。
そんな光景ができたら、お祭りという文化を通じて、日本各地や世界へベイブレードがもっと広がっていくんじゃないかなと思っています。
そのきっかけとして、"ベイブレード盆踊り"があったら、お祭りに取り入れてもらいやすくなるんじゃないかなって(笑)。
あと、盆踊りって絶対回るじゃないですか。それもベイブレードっぽいなと思って(笑)。
真剣に、けれど最高に楽しそうに未来を語る姿勢こそが、この熱狂を生み出している原動力なのだろう。
ベイブレードには「The Power of Spin~回す力で世界をひとつに~」というパーパスが掲げられている。
髙坂さん自身は、この言葉を「コマを回す力そのものが、人と人を繋ぎ、世界の中にうねりを起こしていくこと」だと捉えているという。
小さなコマがスタジアムで起こす回転の力。それは今、言語や年齢、性別の壁を巻き込みながら、世界中を繋ぐ大きな熱狂のうねりへと広がっている。