タカラトミーグループの
サステナビリティ

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見て、触れて、考えて。サステナビリティブースから見えたアソビの未来

2025年8月28日から31日にかけて、東京ビッグサイトで開催された「東京おもちゃショー2025」。国内外の玩具メーカーが様々なおもちゃを披露する一大イベントで、タカラトミーも大規模なブースを出展。今回はその中でも、昨年からスペースを3倍に拡張したという「タカラトミーグループのサステナビリティブース」をご紹介します。展示をプロデュースした石本隆史さんと目玉コンテンツの一つ「プラレールECOセレクションセット」の制作を担当した阿部克之さんにイベントを振り返ってもらいつつ、タカラトミーグループのサステナビリティ活動の現在と未来を語ってもらいました。

Interview

石本隆史

連結管理本部 サステナビリティ推進室 CI推進部

石本 隆史

1997年入社。ベイブレードやビーダマンといったキャラクター玩具の企画・開発に従事したのち、技術開発室の室長を経て現職。石油由来プラスチックの代替素材の検討を行う環境タスクフォースのエコデザイン分科会のサブリーダーとして、おもちゃのサステナブル化の旗振り役も務めている。

阿部克之

生産戦略本部 生産戦略室 技術開発部

阿部 克之

2004年入社。おもちゃの設計や試作を統括する立場として、近年はエコデザイン分科会のサブリーダーとしてトミカやプラレールなどの商品本体やパッケージの代替素材の研究に従事。リサイクル素材から貝殻由来のバイオマス素材まで、あらゆる環境配慮素材を扱ってきたスペシャリスト。

企業の姿勢を示せる場として

今年の東京おもちゃショーでは、サステナビリティ活動に関する展示規模が昨年の約3倍に拡張されました。その背景や経緯を教えてください。

石本
おもちゃの見本市や商談会など、商品そのものをお披露目する場は多いのですが、企業の姿勢やビジョンを示せる場はそうありません。それができる舞台が、年に一度の玩具業界最大のイベント「東京おもちゃショー」なんです。近年、サステナビリティに力を入れる機運が社会的に醸成されているという背景もあり、今年は展示スペースを前年の3倍に広げることになりました。サステナビリティ推進室としては皆さんに紹介したい取り組みがたくさんあるので、展示規模の拡大は大歓迎でした。

今年の展示のテーマ、コンセプトは何ですか?

石本
「アソビの中で、タカラトミーグループのサステナビリティを学ぼう」をテーマに、私たちのサステナビリティ活動に関するクイズを用意し、アソビを通して楽しみながら学べる展示にしました。おかげで、前半2日間のビジネスデー(業界関係者向けの開催日)はおよそ2,000人、後半2日間のパブリックデー(一般公開日)はおよそ3,000人ものお客様にサステナビリティブースを体験していただきました。とくにパブリックデーは、時間帯によって1時間待ちの入場待機列ができるほど盛況だったんですよ。

展示方法や空間作りでこだわった部分はどこですか?

石本
見て帰る、遊んで帰るだけではなく、展示を通じてユニバーサルデザインやエコについて考えるきっかけや気づきを提供できればと考えていました。
「視覚に障害のある方はこうやって遊んでいるんだ」「カカオ豆の皮からもおもちゃの材料ができるんだ」といったことを知ってもらうだけで、その人の人生にポジティブな影響や、それまでなかった価値観をもたらせるかもしれない。そんな想いで展示の準備を進めました。
サステナビリティブース
サステナビリティブース来場者の往来が多い通路に面していたこともあり、パブリックデーには入場待ちも。来場者は写真右奥の入口から入場し、展示を見ながらクイズに答えていく。最後にまわすガチャの景品はプレゼントとして持って帰ることができる(中身についての詳細はこちら)。
サステナビリティメンバー
サステナビリティメンバー イベント期間中は、サステナビリティ推進室のメンバーを中心とするスタッフが、お揃いのシャツに身を包んで来場者に対応した。

少し先の未来を先取り!?
石油由来プラスチック代替素材のプラレールセット

共遊玩具やエコトイといった多彩な展示物の中でも、大きな注目を集めていたのが「プラレールECOセレクションセット」のジオラマでした。

石本
これまでの代替プラスチックの検証成果を披露するために、昨年のおもちゃショーで初めて、エコ素材を使用したプラレールのジオラマを展示しました。その後、社長から直々に「来年は商品化を前提にした展示ができないか」というミッションが与えられたのです。そこで既存商品である「プラレールベストセレクションセット(2024年販売)」のセット内容をベースに、使用する素材を可能な限り環境に配慮したものに置き換えたプロトタイプを作ろうということになったんです。それが今月展示したプラレールECOセレクションセットでした。
阿部
前回のジオラマは、安全面や品質面で商品化の難しい素材を使用したモノだったのですが、今回は、実際の製品と同様の厳しい安全品質基準をクリアする配合で検討できる代替素材を使用し、専用のパッケージも制作するなど、そのまま店頭に並んでいてもおかしくないクオリティのものを目指しました。

使用した環境配慮素材には、具体的にどのようなものがありますか?

阿部
車両のボディには、チョコレートを製造するときに出るカカオ豆の皮(カカオハスク)を配合した樹脂を使っています。その上、安全テストでも割れたり折れたりすることがなく、塗装も行っています。またレールには、もみ殻やヤシ殻を配合した樹脂を採用しました。
石本
当初からプラレールのアイコンである車両とレールには、なるべく印象的な代替素材を使いたいと考えていました。そこで、今までは廃棄せざるを得なかったものを資源としたアップサイクルな素材を採用しています。
阿部
一部の情景パーツにはサトウキビ由来のバイオマス素材を使用していますが、これも私たちが口にできない非可食部を活用したものです。しかしながら、こうした様々な環境配慮素材にも弱点や課題はあります。

と言いますと?

阿部
一番の課題は強度です。子どもたちが遊ぶものですから、おもちゃは厳しい安全基準をクリアしないと市場に出せません。今回の情景パーツの一部は、環境配慮素材を100%使用しているため、完全には安全基準をクリアできていません。配合率を調整することで安全と品質を担保できるパーツに仕上げることが重要です。また、依然として価格が高いこともネック。商品化に向けては、安全面とコスト面のバランスを引き続き精査していく必要があるでしょうね。
プラレールECOセレクションセット裏面
プラレールECOセレクションセット裏面「プラレールECOセレクションセット」のパッケージの裏には、各パーツにどのような代替素材を用いたのかを明記されている。
代替素材の色味を生かし、おもちゃ本体もブラウンやグレーが基調。結果としてシックで大人びた雰囲気も漂わせている。

今回はパッケージも制作したことで、より本物の商品らしく見えました。
デザインは元となった「プラレールベストセレクションセット(2024年販売)」を踏襲したようですが。

阿部
実は商品の収め方はまったく違うんです。プラスチックは、おもちゃ本体だけでなく、梱包材にもたくさん使用されています。現状の商品パッケージだと、電車の車両はもちろん取扱説明書も透明のプラスチック袋に入れられていますし、パーツを固定するために輪ゴムや固定用段ボールも多用されています。でも今回は思い切って、プラスチック袋も輪ゴムも固定用段ボールも全廃した梱包にしたんです。

いずれも製品を保護するために使われてきたものだと思うのですが、全廃しても問題はないのでしょうか。

阿部
実際におもちゃ屋さんに並べる想定で落下試験や引張試験を行ったんですが、プラスチックを全廃した梱包でも大きな問題は見つかりませんでした。もちろんそのまま即導入、と言う訳にはいかず、更なる検討・検証は必要ですが、梱包材の使用量や作業コストを減らすことができるので、比較的導入しやすい環境配慮の施策として、実際の商品にも採用される可能性が十分にあるのではないかと考えています。
プラレールベストセレクションセット(2024年販売)」の梱包
こちらが従来品の「プラレールベストセレクションセット(2024年販売)」の梱包。プラスチック製の袋が使用され、収納された各パーツの隙間を埋めるように、固定用段ボールも使用されている。
「プラレールECOセレクションセット」の梱包
今回制作された「プラレールECOセレクションセット」の梱包がこちら。従来品の梱包に比べると格段にスッキリ。これで梱包するプラスチックも作業コストも削減できる上、販売を想定した試験も無事にクリアした。

ちなみに、「プラレールECOセレクションセット」が販売されるとしたら、値段はおいくらになりそうでしょう…?

石本
現状の仕様ですと従来品の1.5倍ほどを想定しています。今回は展示向けに訴求力のある代替素材を追求した面や、あくまで商品化を想定したチャレンジという側面もあったので、あえて代替素材を惜しみなく使いました。本当に商品化するとなれば、安全性やコストのバランスを見ながら、よりよい落としどころを探っていくことになると思います。
阿部
今のところ「プラレールECOセレクションセット」の販売予定はありませんが、こうしたチャレンジをさせていただいたことで、「ここはよかった」「あそこはもうちょっと…」といった手応えと課題があらためて明確になりました。この経験を通じて、現状の商品にフィードバックできる部分は積極的にしていきたいですね。

プラレールの“使命”とサステナビリティ活動の未来

石本
プラレールというのは、まだおもちゃが木やブリキで作られていた時代に、「その時代の最新素材」だったプラスチックでできたおもちゃとして1959年に発売されたものなんです。そんなプラレールでこうした取り組みを行った背景には、「“プラ”レール」がプラスチックを使わなくなったら面白いのでは、という発想がありました。
阿部
以来、プラスチックはおもちゃ作りに欠かせない素材となったのはご存知の通り。商品を開発・製造する立場からすると、高い強度で多種多様な成型ができ、自由に着色することも透明にすることもできるという、とても汎用性の高い素材です。
石本
しかし環境への配慮が叫ばれる中で、今の時代に見合った新しいおもちゃの素材を開拓する必要性が高まっています。それであれば、「その時代の最新の素材」を使用してきたプラレールこそが真っ先に新たな代替素材の活用を推し進めていくべきではないか……そんなシンボリックな役割をプラレールに担ってほしいという想いがあるんですよね。

では最後に、今年の東京おもちゃショーで得られた手応えや、タカラトミーグループの今後のサステナビリティ活動についての展望をお聞かせください。

阿部
イベント当日に「プラレールECOセレクションセット」に協力していただいた素材メーカー様を招待して、実際の完成品を見ていただいたんです。みなさん本来はおもちゃ作りに関わっている会社ではなかったので、自分たちの素材や研究がおもちゃとして結実している姿を見て、とても喜んでくださったのが印象的でした。私も含めて、作り手がこんなに喜べるのなら、お客様にもきっと喜んでもらえる。そう信じて、引き続き環境に配慮した商品のあらゆる可能性を探っていきたいです。
石本
今回の東京おもちゃショーでは、サステナビリティやSDGsをフィーチャーしたメーカーさんが以前に比べて減った印象がありました。タカラトミーグループとしては、こうした活動が世の中の課題解決につながることであるという信念をもっています。今後もエコな素材の追求はもちろんのこと、共遊玩具のように目や耳が不自由な子どもたちでも楽しめる、より多くの人々を取り残すことないアソビの追求も続けながら、アソビを通じたよりよい社会づくりに貢献したいですね。
Let's Study ブースをめぐってサステナビリティを学ぼう! 展示&体験コンテンツ

貴重なおもちゃの実物展示から、触れて、遊んで、学ぶことができるクイズまで。連日大盛況だった今年のサステナビリティブースから、5つのコンテンツをピックアップしてご紹介します!

1

誕生35周年!
共遊玩具に触ってみよう

入口の正面で来場者を出迎えたのは、目や耳が不自由な子どもたちでも遊べる「共遊玩具」の展示コーナー。箱の中に入っているおもちゃを手の感触だけで当てるクイズのほか、社内に眠っていた1990年発売の共遊玩具第一号(対戦型テトリス)を初展示。そんな貴重で懐かしいアイテムに業界関係者や親御さんたちが釘付けになっていた様子。
目の不自由な子どもたちは、どうやっておもちゃを知覚しているのでしょう? 普段は気づきにくい共遊玩具の特色をクイズ形式で体験することができました。
2

エコトイクイズ!
おもちゃのパッケージを
紙にすると…?

エコトイとは、「材料の工夫」「エネルギーの工夫」「長く遊べる工夫」「パッケージの工夫」「気づきの工夫」のいずれか1つ以上の基準をクリアした、文字通りエコを考えたおもちゃのこと。ブースでは再生プラスチックを使用した「エコレール」やパッケージが紙製になった「トミカ」「モンコレ」といったエコトイの定番アイテムを展示しました。
トミカやモンコレのパッケージが紙製になったことで、1年間に削減できたプラスチックの量をクイズ出題。正解は……なんとアジアゾウ20頭分(計80トン)!
3

役目を終えたおもちゃから
生まれ変わった
サステナビリティサイン

役目を終えたおもちゃのリサイクルプロジェクトから生まれたのが、この「Sustainability」の看板文字。おもちゃを砕いて金属類を取り除き、種類ごとに分別された樹脂を使って再びおもちゃにリサイクルさせようという研究が進められています。今回は粉砕したプラスチックに圧力をかけて板状にし、色鮮やかな看板に生まれ変わらせました。
粉々にされたおもちゃはちょっぴり悲しそう。粉砕・分別したあとの活用の仕方が今後の課題。おもちゃが再びおもちゃになる水平リサイクルの実現に期待!
4

ファンもびっくり!
ECOなプラレールはここまで来た

インタビュー内でも取り上げた「プラレールECOセレクションセット」。カカオ豆の皮をはじめ、通常なら捨てられてしまうものがおもちゃになる。そんなアップサイクルな素材活用の最前線を、従来品と変わらず元気に走るプラレールのジオラマを通して披露。子どもたちや大人たちの関心も高く、今後も引き続き製品化に向けた検討が進められます。
「もうこうして走ってるの!?」と、会場で驚きの声を上げていたプラレールファンもいたとか。子どもたちやファンの夢を乗せて、近い将来、製品化が実現しますように。
5

全問正解するとガチャ体験!
サステナビリティの
オリジナル商品がもらえる!

サステナビリティブースの最後に、クイズ3問に全問正解するとガチャが回せます。実は今回、業界関係者が熱い視線を送っていたのがこの新型軽量化カプセル。メッシュにすることで樹脂の量を約30%も減らし、環境に配慮しながらコストダウンを実現。今後タカラトミーアーツが製造するガチャカプセルは、順次新型軽量化カプセルに切り替わっていく予定です。
新型軽量化カプセルの中身は、カカオハスク配合の樹脂でできたタカラトミーのオリジナルキャラクター「のほほん族」。チョコレートっぽい風合いが子どもたちからも大好評。
ストーリー 一覧